- 木毛セメント板は環境に優しい建材
- 住宅に相性の良いメリットが沢山
- 下地材だけでなく仕上げ材としても優秀
- 隈研吾さんのあの作品にも木毛セメントが使用されている
みなさん、こんにちは!
突然ですが、みなさんは「木毛セメント板」をご存知ですか?
「木毛セメント板」とは建材の一種で日本では90年以上前から下地材として使用されてきました。
最近では木毛セメント板の表面の無骨な雰囲気がインダストリアルテイストとマッチし、壁や天井の仕上げ材として使用されたりもしています。
アクセントとしてだけではなく、天井全面や壁一面に貼る場合も多く、表面を塗装することもできるため、活用方法は様々です。
しかも木毛セメントはメリットも多く、住宅にぴったりの建材なのです。
そこで今回は「木毛セメント板」について徹底解説していきます!
木毛セメント板の名前を初めて聞く方や知っているけど使い方に不安がある人は是非参考にしていただけると嬉しいです。
目次
木毛セメント板とは?種類や使用場所は?
まず始めに「木毛セメント板」とは何なのか説明していきましょう。
木毛セメント板とは木材をリボン状に細長く削り出し、セメントペーストで圧縮成型した建材です。
木毛セメント板が使用されるようになったきっかけは大正12年の関東大震災にあります。関東大震災では震災時に発生した火事による死者数が建物倒壊による死者数よりもはるかに上回ったため、その教訓を生かし耐火性のある建材を取り入れ用としました。
その際にドイツのヘラクリート社の木毛セメント板を輸入し始めたのが始まりです。
ヨーロッパではそれよりも前から木毛セメント板を使用していたため、100年以上前から使用されていたことになります。
日本では昭和初年に国産化され、広く使用されてきました。
では現在木毛セメント板はどのような場所に使用されているのでしょう。
木毛セメント板は高い耐火性があることから屋根下地(野地板)として使用される事が多く、他にも外壁下地や木毛セメント板の表面の表情を生かして内装仕上げ材としても使用されています。
内装仕上げ材についてはこの記事の最後に事例をご紹介していきます。
さらに、吸音性に優れているという特徴から音楽スタジオや会議室でもよく使用されています。
また、木毛セメント板にはどのような種類があるのでしょうか。
木毛セメント板はかさ密度により大きく分けて3種類に分けられます。
1.普通木毛セメント板・・・かさ密度0.4g/m3以上0.7 g/m3未満
2.中質木毛セメント板・・・かさ密度0.7g/m3以上1.0g/m3未満
3.硬質木毛セメント板・・・かさ密度1.0g/m3以上
かさ密度が高い方が耐火性・遮音性に優れており、見た目も隙間なく木毛が詰まっています。
他にも不燃木毛セメント板や内装用のものなどもあります。
引用:竹村工業株式会社
また、厚みはJIS規格により決まっています。
引用:JIS規格
木毛セメント板のメリット・デメリットとは?
木毛セメント板の特徴はメリットの多さにあります。
ではどのようなメリットがあるのかご紹介していきます。
《メリット》
1.体への安全性
木毛セメント板は木・水・セメントのみで作られており、シックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒドのような有害物質は含まれておりません。安心して住宅の建材として使用できます。
もちろん廃棄処分したり燃やしたりしても有害な物質は発生しません。
2.調湿性
湿度が高い時には吸湿、湿度が低い時には放湿してくれるため、室内の室温を快適に保ってくれます。木毛セメント板は「呼吸する建材」と言われています。
3.資源性
木毛セメント板は間伐材や製造時の端材・残材などを有効利用して作られており、とってもエコな建材です。
2001年4月からはグリーン購入法(国などの公的機関が率先して環境物品等を優先購入して環境物品等の市場を促進し、持続可能な発展による循環型社会の形成を目指すことを目的とした法律)の指定材料になっています。
使用するセメントも従来はポルトランドセメントですが、エコセメントを使用した商品も出ており、より地球環境に配慮した建材となっています。
4.断熱性
高い断熱性能を持っており、夏は涼しく、冬は暖かく過ごす事ができます。光熱費の節約にもつながります。
5.遮音&吸音性
木毛セメントは板多孔質材料のため、繊維の中に含まれている空気と木質繊維との摩擦によって空気の振動が熱エネルギーに変わって吸音現象が起こります。その特徴を生かし、会議室や音楽スタジオなどでも使用されています。
また、外部の音を遮音する特性も持っています。
マンションや小さい子供がいる家庭にぴったりです。
6.消臭性
主にアンモニアやトリメチルアミン(主に魚介類の臭い)を吸収・消臭してくれます。
7.耐朽性
木材というと腐ったりシロアリ被害というイメージがありますが、木毛セメント板は木材腐朽菌による質量減少率0パーセントなのです。木材が腐る時は木材腐朽菌が木材を食べるということなのですが、0%ということは木材腐朽菌にほぼ食べられず高い耐朽性を持っているということを意味しています。
またシロアリからの被害も少ない建材です。
と、このようにいいことづくしの木毛セメント板ですが、デメリットはあるのでしょうか。
実はデメリットはほとんどなく、強いて言えば以下の5つが挙げられます。
《デメリット》
1.表面の表情が特徴的なため、仕上げ材として使用する場合はお部屋のテイストを選ぶ
2.表面がざらざらしているため触り心地はあまり良くない
3.住み始めはセメントの粉がポロポロ落ちる事がある(徐々に馴染んでいく)
4.汚れが落ちにくいため、床の仕上げ材としては使用が難しい
5.外壁のような常時水に接する環境では使用不可
木毛セメントの施工方法についてみてみよう!
次に木毛セメント板の一般的な施工方法をご紹介していきます。
引用:全国木質セメント板工業会
ビスまたは釘の留め付けピッチは 400 ㎜以内とし、木毛セメント板の色と合わせて使用 してください。
また、こちらは一般的な施工方法になりますので、実際に使用する場合は各メーカーから出している施工要領をよく読んで施工してください。
施工上の注意点
・角などを傷つけないように運んでください。
・一枚ずつ運ぶ場合は立てて運んでください。
・常時水に接する環境での使用は避けてください。
施工事例の紹介!
最後に施工事例をご紹介していきます!
まずご紹介するのはこちらの「根津美術館」です。
こちらの写真、みなさんも一度は目にした事があるのではないでしょうか。
隈研吾さんが設計した竹格子と深い軒のアプローチが特徴的な根津美術館ですが、
何と野地板に木毛セメント板が使われているのです。無骨な印象の木毛セメント板ですが、竹格子とうまく調和しています。
引用:興亜不燃板工業株式会社
こちらの事例は壁一面に木毛セメント板を施工した事例です。
木毛セメント板に白色の塗装をしており、シャープな仕上がりになっています。階段のアイアンの手すりの雰囲気とも合い、クールな印象に仕上がっています。
こちらも壁一面に木毛セメント板を施工した事例です。先ほどの事例同様白色の塗装を施していますが、ナチュラルテイストに合わせており、先ほどよりも柔らかい印象を受けます。
この事例はリノベる溝の口ショールームの一部分なので訪れる機会があれば実物を見てみてください。
今回の「木毛セメント板」特集はいかがでしたか?
想像していたよりも気軽に提案できると思った方もいらっしゃると思います。
提案してみたいけど「どんなテイストに合うか分からない。」と思っている方は、まずインターネットで様々な事例を見て、どのようなテイストに木毛セメント板が使用されているのかをチェックしてみてください。
何件か見ていくうちに木毛セメント板が使われているテイストの傾向や使用場所が分かってくると思います。
そしたらまずは同じようなテイストのお客様に提案してみるのが良いと思います。慣れてきたら、自分で色々なテイストと組み合わせて提案の幅を広げていってください。
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