この記事のポイント!
- ハレは「非日常」を表し、ケは普段の「日常」を表す
- パブリックゾーンを考えるために大事なことは、家族以外の来客動線を考えること。
- ハレの空間に可動間仕切りや窓を配置することによって、ケの内包が可能に?
コロナ禍の冬、例年より一層家にこもることが多いのではないでしょうか?
特に今年は在宅ワーク導入が本格化し、家庭に働く場が介入し、個室を意識する方が増えました。
今までの家を新たに見直す機会が増える中で、着目したいのがハレとケを意識したゾーニング。今回は、ただ単にLDKや水回りと配置するだけの作業ではない、少し目線を変えた「ハレとケ」という視点からみるゾーニングのお話です。
あまり聞いたこと無いかと思いますが、デザインの軸となる話ですので、若手デザイナーの皆さんは必ず覚えておいて欲しい内容です!
目次
そもそも、ハレとケって何?
「ハレとケ」は、民俗学の祖といわれる柳田國男が説いた日本人の伝統的な世界観のひとつ。
「ハレ」は、”晴れ着”などの言葉にもみられるように儀礼や行事なのど「非日常」
「ケ」は普段の「日常」
を表しています。
ハレは、衣食住や振る舞い、言葉遣いも普段のケの時と区別した特別なものとして存在していました。この概念を通して昔ながらといわれる日本民家をみると、ハレは座敷や応接間、ケは寝室や個室に反映され、部屋の設えが異なっています。
さらに広義に捉えてゾーニングに落とし込むと、ハレは【パブリックゾーン】/ケは【プライベートゾーン】として分けられます。
しかし、現代の(特に都市の)狭小住宅では、ハレの応接間だけをつくることはなく、日常的に使うリビングが、来客がある時にハレの場として使われます。現代では、時と人の関わり合いで場が変化しています。
パーソナルスペースを考える?
ハレとケを意識すると、紋切り型の提案の仕方が当てはまらなくなります。
それは、人それぞれの心地よいと感じるパーソナルスペースが異なることでハレとケの関わり合いが変わることが一因としてあります。
どこまでを他者にみせられるもの・共有できるものになるのか?
家族から離れてこもる場は、緩やかにつながっていてもいいのか、しっかりと閉じて集中したいのか?
お客様の個性によって異なるハレとケのゾーニングは、お客様のパーソナルスペースを推し量る作業です。
ハレの間はどこ?
部屋の広さが限られている住まいにおいては、ハレの間(ま)となる、パブリックゾーンはどこにあたるでしょうか?
パブリックゾーンを考えるにあたって、人の関わり合いが発生する場に注目してみましょう。
一番わかりやすいのは、家族以外の来客動線を考えること。
次に、それぞれの家族動線の重なる場を考えること。
対して、1人にこもる場としての使い方となるのは、どこか?
それぞれの立場になって、妄想してみましょう。
- どうしたらゲストが使いやすく、素敵な家だな~と思うか?
- 家族が生活しながら快適に過ごすには、どこに暮らしの交差点をつくるか?
- 一人で寛いだり、自分だけのお気に入り空間は、どこになるんだろう?
ゾーニングしてみよう!
さて、パーソナルスペースを考え、ハレとケの妄想をしはじめたら、ゾーニングをしてみましょう!
今回は、ハレとケを意識した手法を3つご紹介します。
- メリハリをつける
- 組み合わせる
- 内包させる
1:メリハリをつける
ハレとケを視線から明確に分けることで、生活感のでるケの要素を隠くし、ハレの間との空間を際立たせて、メリハリをつくることができます。
- 視線から生活感のあるものを隠したリビング
- 主張しないキッチンを家具としてハレの間に配置
- 中間壁のような収納でモノが入っていることを感じさせない
2:組み合わせる
本来は、ケの要素としてみられる寝室や洗面所などをハレの場に組み合わせて配置することで、新たな使い方や暮らし方が生まれます。
- 廊下にある洗面所
- 帰ってすぐ手洗いうがいができる衛生面の良さ
- ゲストも洗面所を探すことなくササっと手洗いできる使い勝手の良さ
- 魅せる洗面所を意識するようになる
- 玄関にワークスペース
- 土足エリアに作業場(仕事場)を設けることで、行為のON/OFFをつくる
- TVなどの音が気になる場所から隔離した部屋にしやすい
3:内包させる
ハレの場としてあるリビングなどに、可動間仕切りや窓を配置することで、ケのプライベートスペースを内包させると同じ空間でも時によって異なる使い方ができるようになります。
- リビングスペースにある小上がり
- いつもは寝室、来客時は団らんスペースに変容する
- ベッドを置かないことで、用途にしばられない場所が生まれる
いかがでしたでしょうか?
今回は、日本の伝統的な考え方である「ハレとケ」を軸にリノベーションのゾーニングについてご紹介しました。
ゾーニングを考える際、つい日常の生活動線や家事効率など利便性を優先的に落とし込みがちですが、「家」は日々の生活基盤であると同時に、人々の暮らしを彩る憩いの場でもあります。
ぜひ今回の記事も参考にしていただき、お客様の暮らしに寄り添った豊かな空間を提案できると良いですね!
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