
リノベーションという言葉が浸透し、住宅購入の選択肢に「中古+リノベーション」が挙げられるようになった昨今。
リノベーションを選択されたお客様の中には、
- 『リノベーションには興味があるけど、実際どういう部屋が好みなのかわからない』
- 『とりあえず恰好いい部屋にしたい』
という方も少なくありません。また反対に、やりたいことがありすぎて決めきれないという方もいらっしゃいます。
このようなお客様との打合せでは、仕上げの選定で時間がかかってしまうこともしばしば。予定の工事に間に合わないなんてことになりかねません。
そこで今回は、部屋のイメージが分からず仕上げがなかなか決まらない時の基本的な仕上げ提案の考え方をご紹介していきます。
目次
お客様のタイプを知る
事前の情報で新しいお部屋のテイストが定まっていない場合は、仕上げの打合せをする前に、まず最初にお客様のタイプを探ることが第一歩です。
事前に営業担当者から、お客様の様子(特に物件等を決めるときなどの決断時)から、どのようなタイプか想定しておきましょう。
タイプによって、打ち合わせ時の提案の仕方をかえると進めやすくなることがあります。
①人見知りするタイプ
YESかNOで答えやすい質問から好みを掘り出していく。
②優柔不断タイプ
悩みにつきあう中で何が決めかねる原因になるのかを明確にして提案する
③合理主義
素材のメリットデメリットを踏まえご説明する。
好みのテイストを知る
お客様のタイプがわかっても、何を提案したらいいかわからない時は、どのようなテイストのインテリアが好みかをあたりをつけましょう。
本当はフレンチシックが好きな方にブルックリンスタイルの提案をしては、一向に定まりません。
お好みの空間イメージ画像等があれば共有していただきましょう。
なければ、以下のように好みのテイストを絞っていく方法もあります。
- 「きれいめ」「ラフ」「古道具屋ぽい」などの形容詞でアリかナシかを取捨選択する
- テイスト別の画像集をつくって、視覚的に具体的なイメージを共有して方向性を絞る
しかし①でつまづいてしまう場合は、お客様の生活習慣からイメージに転化して提案するのもよいでしょう。
①服装
無地でシンプルな服を着ることが多いのか、小物でアクセントがきいたものが好きなのか、ブランド志向なのか。服は一番身近な空間なので、お客様の趣向が現れやすいのです。
②趣味
アウトドア好きか、料理好きか、風呂好きかなど、好きな行動から暮しにおいての選択思考を探って、用途からテイストの方向性を引き出すヒントになることも。
③好きな場所、旅先など
好きな場所に傾向があるなら、そこからテイストのイメージが広がることがあります。海辺のようにリラックスできるリビングや、エスニック気分が味わえる寝室など。
軸を決める
さて、お好みのテイストがわかってきたところで、細かく素材の選定を進めていきましょう。
でもどこから始めたらいいのでしょうか?
とりあえず気になる素材をみていくだけでは、仕上げの迷路から抜け出せません。選定の軸を決めておくと、立ち止まらずに進められるでしょう。
- 好きな部屋を起点に決めていく
イメージしやすい部屋は、決定が覆りにくいです。その部屋を中心として、隣りのスペースをどう調和させるか、ストーリーをつくっていくとよいでしょう。(明るいリビングで朝ごはん、寝室はゆったりできる落ち着いた色味など) - 面積の大きいところから決める
フローリングが壁など、部屋の大きな面積を占める箇所はテイストの土台になります。同じ白い壁でも床材が「明るめか?暗めか?」で印象が全く違いますよね。
お客様のお好みのテイストの共通認識が構築できていれば、デザイナーから選択基準となる軸をもとにお話しすると決めやすくなります。
予算とのバランスをみる
好きなものがわかって順調に決まったと思いきや、いつのまにか高価なものばかりに選択されてしまっていた…なんてこともあります。
できる限りお客様の限られた予算内で収めることも必要です。
仕上げ選定の段階で、部屋のインテリアの軸を決めて、お客様と何を重要視しているかを話し合っていれば、VE案(減額案)の提案もしやすくなります。
最近では、触感がリアルな壁紙やクロスなど様々な製品が開発されています。
それぞれの素材の良し悪しをふまえながら、その材にしかない性能よりも見た目重視で選ばれているなら代替え品の提案をしてみましょう。
更に、ご夫婦で好みのタイプが異なる場合は、テイストや仕上げの選定が難航することもあります。お互いの譲れないところを見極めて、何に采配を振ってもらうか役割分担を明確にすると、ご夫婦それぞれ決めやすくなるケースもあるので、試してみてくださいね。
さて、今回はリノベデザイナーとして抑えておきたい設計時の基礎スキル「仕上げの提案」についてご紹介しました。
設計プロセスにおいて、決してこの提案方法が全てではないですが、
なかなかお客様の好みが掴めない・・・・
方向性が決まらない・・・・
と行き詰まった際には、ぜひ今回の記事を参考に、少しお客様に別のアプローチからご提案をしてみると良いかもしれません。
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