~この記事でわかること~
- マンションには「ラーメン構造」と「壁式構造」の2種類がある。
- ラーメン構造は壁式構造に比べ間取りの自由がききやすい。
- マンションは使う材料によって「RC造」「SRC造」「S造」がある。
- 壁式構造を上手に使ってリノベーションのプランニングを行おう。
みなさんこんにちは!
突然ですがみなさんは「ラーメン構造」や「壁式構造」という言葉を聞いたことがありますか?聞いたことはあるけど、リノベーションとのかかわりがいまいちピンとこないという方もいるかと思います。
そこで今回は、マンションのリノベーションに関わり始めて間もない方向けにマンションの構造について解説していきます!マンションの構造はプランニングにも大きく関係してくるので是非参考にして下さい!
目次
「ラーメン構造」「壁式構造」って何?
まず、マンションの構造について説明しましょう。
マンションは大きく分けて「ラーメン構造」「壁式構造」に分けることができます。
ではそれぞれについて解説していきましょう。
引用:マンションデータPlus
◎ラーメン構造
ラーメン構造とは柱と梁が剛接合で固定されている構造のことをいいます。
食欲をそそるような名前ですが、ラーメン構造のラーメンとはドイツ語で枠や額縁を意味する「Rahmen」から来ています。
ラーメン構造は以下のようなメリットがあり、特に高層建築物や商業ビルなどで用いられています。
【メリット】
1.一体化された柱と梁
柱と梁が剛接合で一体化されており、枠組みとして建物を支えています。
2.自由度が高い
ラーメン構造は内部の空間を構造体の柱や壁で遮られる事が少ないため、内部空間のレイアウトを柔軟に設計することが可能です。
間取りを自由に変えることができるため、リノベーション向きの構造といえます。
3.建設の単純化
構造部分は柱と梁のみというシンプルな構造なため、構造計算は比較的容易です。構造以外の内部や窓周りなど強度の事を考えながら設計する必要が少ないです。
また、施工に関しても他の構造に比べ簡単に行えることが多いです。
4.高い耐震性
ラーメン構造は適度な柔軟性を持っており、地震の際は横に変形しやすいのですが地震エネルギーを吸収してくれるため、重大な損傷を防いでくれます。
【デメリット】
1.柱や梁が太くなることがある
構造体は柱と梁のみのため、強度を高めるためには構造体である柱と梁を太くする必要があります。太くした柱や梁は室内に現れてくるため、梁の部分の天井高が低くなることがあります。
※ただ、近年ではそれを解消するために「逆梁アウトフレーム工法」という工法を用いる場合があります。「逆梁アウトフレーム工法」とは外壁側の壁を室内側ではなくバルコニー側に出し、梁はスラブの上側に立ち上げる工法です。この工法により空間に出っ張りが無くなり、背の高い窓の設置も可能になりました。
下の画像の左側が「逆梁アウトフレーム工法」で右側が従来の工法です。
引用:SUUMO
2.コストがかかることがある
ラーメン構造では一般的に高品質の材料が使われがちです。高品質の材料を使うとどうしてもコストが高くなってしまいます。また、柱や梁を太くすればその分材料費がかかるので、コストが上がります。
◎壁式構造(壁構造)
次は「壁式構造」です。壁が構造体となり、建築物の荷重を壁で支える工法を壁式構造(壁構造)といいます。
壁式構造は、特に住宅、小規模オフィスビル、倉庫など、低層建築に適しているとされています。
【メリット】
1.空間がすっきりする
ラーメン構造と異なり、壁が構造体となるため、梁や柱が室内に飛び出してきません。その為、空間に変な出っ張りがありません。
2.躯体現しをすることができる
室内に現れる構造壁を生かし、外壁面や隣界壁面以外もコンクリートの躯体現しにすることができます。
【デメリット】
1.間取りの自由度に制限がある
室内にある躯体壁は基本的に壊すことができません。その為、ラーメン構造に比べて自由度に制限があります。
また、開口部分の高さや幅も既に決まっているため、既存のサイズより大きくすることができません。
2.高層建築物には使用できない
壁式構造は構造上、高層の建築物には用いることが難しいと言われています。
ラーメン?壁式?構造の種類の見分け方
次に構造の種類の見分け方を説明していきます。リノベーションのプランニングをするにあたり、マンションの構造の種類はとても重要です!!!
ではどこで判断すればいいのでしょうか?主に以下の確認方法があります。
1.図面から判断する
まずは図面を見てみてください。上記の図面のように隅(四隅では無い場合もあります。)に柱があったらラーメン構造です。逆に柱がない場合は壁式構造になります。
まれに図面と現状が異なることがあるので、図面だけで判断せず現状も確認して判断しましょう。
2.現地調査で判断する
現地調査時のポイントを説明していきます。
・天井の点検口から覗いてみてください。外壁面や隣界壁面などの躯体壁面以外にもコンクリートの壁があったら壁式構造です。ラーメン構造の場合でも水回りなど一部の壁がコンクリートでできている場合もあるので、一部のみではなく室内全体にコンクリートの壁がある場合です。
・室内に梁や柱が出っ張っている場合はラーメン構造です。換気ダクトを隠すために梁型を作っている場合もあるので気をつけましょう。
・壁の厚みを確認してみてください。壁式構造の躯体壁部分は間仕切り壁よりも厚みがあります。
マンションの構造についてはリノベーションのプランニングに大きく影響するので、慣れないうちは先輩方の現地調査に同行して確認ポイントを教えてもらいましょう。
RC造?SRC造?S造?って何!?
また、マンションの構造は材料によっても区別することができます。
一般的に、マンションには以下のような構造方式が採用されることが多いです。
引用:フェイス住販株式会社
◎鉄筋コンクリート造(RC造)
RC造とは鉄筋とコンクリートを組み合わせた構造です。鉄筋は圧縮力に弱く引張力に強いのですが、コンクリートは引張力に弱く圧縮力に弱いという性質を持っています。お互いの弱点を補っている構造がRC造です。
また、高い耐火性、耐震性を持ち、長期にわたる耐久性があります。その為、木造に比べて耐用年数は約2倍となっています。
◎鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)
SRC造とはRC造に鉄骨を組み合わせた構造で、高層ビルや大型のマンションに用いられています。
鉄骨を支柱とし、その周りに鉄筋を組んでコンクリートを流し込むことで、より高い強度と耐火性・耐震性・耐火性を兼ね備えた構造となっています。
また、SRC造もRC造と同じ耐用年数となっています。
◎鉄骨造(S造)
鉄骨造とは鉄筋を主要な構造体としています。鉄骨造の中でも2種類あり、鉄骨の厚みが6㎜以上のものは「重量鉄骨造」と呼ばれ、3階以上の建物に用いられる事が多く、一方6㎜未満のものは「軽量鉄骨造」と呼ばれています。RC造に比べ軽量で施工が早く、大スパンの空間をつくりやすいのが特徴です。
この3種類の中でよく見るのはRC造なのではないでしょうか。
なお、見分け方ですがマンションのマイソク(販売図面)に構造を記載する欄があるのでそこで確認してください。
壁式構造のリノベーション事例紹介!
最後に、嫌厭されがちな壁式構造ですが、躯体壁を上手く生かした壁式構造のリノベーション事例をご紹介します。
引用:リノベる。
こちらの事例は室内にある構造壁をうまく生かした事例です。
キッチンとダイニングの間にある構造壁を利用してカウンターキッチンをつくり、ゆるやかに空間を区切っています。
また、間仕切りとしても利用することでリビングと水回りの空間を区切る役割もしています。
室内の構造壁をあえてコンクリートの躯体現しにすることで、ラーメン構造ではまねできないデザインになっています。
引用:リノベる。
室内に梁や柱がないので無駄な出っ張りがなくすっきりとした印象です。水平垂直のラインが綺麗に出ていますよね。
壁式構造を上手く活用しているからこそ、すっきりとした空間をつくることができます。
ちなみに世界的に超有名な安藤忠雄氏の作品「住吉の長屋」は壁式構造なのです!機会があればデザインだけでなく構造にも着目して見てみてください。
まとめ
今回は「マンションの構造」についてご紹介しましたがいかがでしたか?
筆者自身、木造のリノベーション設計からマンションのリノベーション設計に移ったので、マンションのリノベーションをやり始めた当初はマンションの構造に戸惑いました。
マンションをリノベーションする際、マンションの構造によってプランの内容が変わってきます。よって構造の種類は結構大事なポイントです!できることなら現地調査より前に図面を入手し、現地調査までには構造を把握しておくようにしましょう。
なお、ラーメン構造であっても一部にコンクリートブロックが使われていたり、躯体壁であったりすることもあるので気を付けてください。
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