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2023.08.13

いまさら聞けない!?リノベーションでよく聞く「躯体現し」とは!?

いまさら聞けない!?リノベーションでよく聞く「躯体現し」とは!?

~この記事でわかること~

  • 躯体現しはRCのリノベーションならではの手法
  • 躯体現しは空間を広く使うことができ、クロスや塗装に比べてコストを抑えることができる
  • 断熱材がある場合や角部屋・最上階は躯体現しには不向き
  • 実例を見てアイディアを取り入れよう

みなさんこんにちは!

みなさんはマンションリノベーションにおいて、「躯体現し(くたいあらわし)」を行ったことはありますか?
マンションリノベーションに携わっていると「躯体現しにしたい」という要望を受けることが少なくありません。
躯体現しはコストも抑えられ、新築では表現できない雰囲気になることから人気があるのですが、注意しなければならない点もあります。
そこで今回は「躯体現し」について紹介していきます!
最後に実例紹介もあるので是非最後まで読んでいただけると嬉しいです。

リノベーションでよく聞く「躯体現し」とは!?

みなさん既にご存じかと思いますが、まずは躯体現しについて説明していきます。

「躯体現し」とはマンションの躯体部分を内装で覆い隠さず露出したままにすることをいいます。マンションの躯体とは主にコンクリートとなり、躯体現しをする場合は敢えて内装仕上げをせず、躯体をむき出しにしたままにします。
RCでのリノベーションならではの手法になり、ブルックリンテイストやインダストリアルテイストの内装によく合います。
主に天井や壁に用いることが多く、床に対しては実用性を考えるとあまり行いません。

では次にメリット・デメリットを見ていきましょう。

【メリット】

1.味わいのある表情を表現することができる
コンクリート打ちっぱなしは無機質でシンプルなイメージのため、インダストリアルテイストだけではなくスタイリッシュなお部屋やカフェ風のお部屋にも合わせることができます。
躯体現しとなると施工時のGLボンドの跡やスリーブの穴などがあり、コンクリートも経年変化しビンテージ感が出て味わい深くなります。
新築のコンクリート打ちっぱなしにはない、深い味わいが魅力的です。

2.メンテナンスが不要
クロスや塗装などと違い傷や汚れなどに強く、再塗装やクロスの張替のような定期的なメンテナンスがほぼ不要です。むしろ傷や汚れも味のひとつになります。

3.低コストで施工ができる
クロスや塗装などの仕上げが不要なため、内装仕上げを行った場合よりも低コストで抑えることができます。

4.空間を広く使うことができる
躯体部分の内装材を施工するためのふかし壁等が不要となってくるため、壁の分だけ空間を広く取ることができます。
また、従来の天井は換気扇のダクトなどが通る関係上、躯体と天井仕上げの間にスペースがありますが、その部分をなくすことができるので天井高さも躯体の高さまで上げることができます。

【デメリット】

1.遮熱性能が低下する
コンクリートは熱伝導率が高く、夏は外気の熱が部屋の内部に伝わりやすく、冬場は外の冷気が部屋の内部に伝わりやすくなります。特に角部屋や最上階はお部屋が外部に面しているので、「夏は熱く冬は寒い」というようになり、冷暖房効率が低下してしまう可能性があります。

2.防音性能が低下する
コンクリートは振動を伝えやすい性質があるため、部屋からの音が隣接する住戸に伝わりやすくなってしまう可能性があります。

3.解体後でないと躯体の状態が分らない

全ての中古マンションの躯体の状況が良好というわけではなく、解体するまで躯体の状況は分かりません。
築年数の経ったマンションの場合、ボロボロだったり、施工時の墨出しの線やメモが残っていたりすることがよくあります。また、クロス直貼りの場合は綺麗にはがせない場合もあります。

4.ダクトや配線が露出する

これは躯体現しだけではなく、躯体に塗装する場合などにも言えますが、天井や壁を作らないため、ダクトや配線を隠すことができません。コンセントボックスも露出になります。
また、天井を躯体現しにする場合はダウンライトを設置することができません。ダウンライトは天井に埋め込み設置するので、設置するためには天井を作らなければなりません。

「躯体現し」をする時の注意点とは?

「躯体現し」のメリット・デメリットが分かったところで、ここからは「躯体現し」にする際の注意点を段階ごとに説明していきます。

【現地調査時】
躯体現しが可能かどうか確認しよう!

①壁:ふかし壁か直貼りか
外壁面や隣界壁面などの躯体壁面はGLボンド工法や木軸などで壁をふかして、PB張の上に仕上げているか、モルタルなどで均した上に直接クロスで仕上げている場合が多いです。
前者の場合、壁面を躯体現し仕上げにすると、GLボンドの跡や木片が残ってしまう可能性があります。
後者の場合、クロスが綺麗にはがれない可能性があります。
<チェック方法>
・壁面をたたいた時の音の違いがないか(軽い音はふかし、硬いと直)
・点検口から目視でチェック

②天井:吊り天井か直貼りか
天井は梁やダクトなどの配管を隠ぺいするために吊り天井で造作されているか、天井高さを最大限とるために躯体天井に直に仕上げ材を施している場合があります。
基本的に水回りは吊り天井ですが、リビングや寝室は直張り天井のことがありますので、忘れずにみていきましょう。
<チェック方法>
・天井をたたいた時の音の違いがないか(軽い音はふかし、硬いと直)。届かない場合は、硬いスケール(コンベックス)でもOK。
・埋込ダウンライトや換気扇がある天井は、一般的に吊り天井。

③天井・壁:断熱材が入っているか。入っている場合は断熱材の種類
外壁面や隣界壁面などの躯体壁面や躯体天井面には断熱材が入っている場合があります。フェルト状やボード状のものは撤去可能ですが、以下の写真のように吹付の断熱材の場合は撤去することは難しいと考えた方がよいでしょう。

<チェック方法>
・点検口から目視でチェック
・エアコンなどのスリーブを外して目視でチェック
※こちらの記事も参考にしてください!
中古マンション、断熱材は入ってる?「3つの確認方法」

【設計時】
現地調査結果をもとに躯体現しができる部分を検証しながら設計しよう!

①断熱材が入っている部分は基本的には躯体現しをしない。
断熱材を撤去してしまうと結露が発生してしまう可能性があるので、お客様に断熱材の性能を説明し、基本的には断熱材を残す設計をしましょう。
また、吹付の断熱材は外気に面する箇所をしっかり覆う様に室内側に折り返して施工していることが多いです。折り返し部分を忘れがちなので気を付けてください。

②最上階の天井や角部屋は躯体現しには不向き。
コンクリートは熱が伝わりやすい材料です。特に最上階のお部屋の場合、屋上の熱が天井の躯体を通じてお部屋に伝わりやすいので、天井の躯体現しはおすすめしません。
また、角部屋も同じく外に面している壁面は熱が伝わりやすいので、躯体現しはおすすめしません。

③配線、コンセントボックスやダクトが露出することを考慮して設計する。
まず、配線やダクトなどが露出することをお客様に説明しましょう。
特に天井の配線などはごちゃごちゃしやすいので、すっきりするルートを考えましょう。ダクトの露出が気になる方はその部分だけ梁型を作ることも可能です。全体のバランスをみて設計しましょう。
また、コンセントボックスも露出するので、壁よりもコンセントボックスが飛び出ます。

その為、コンセントボックスを設置する部分には壁にぴったりとくっつけて家具を置くことができません。キッチンまわりではコンセントボックスが邪魔になってしまう可能性があります。

④天井を躯体現しにする場合はダウンライトは不可。
デメリットにも書きましたが、天井を躯体現しにする場合はダウンライトを取り付けることができません。
その旨を考慮して照明計画を行いましょう。

【施工時】
解体後に改めて躯体現しができるか判断しよう。

①解体後に現地調査時と異なる所があるか確認する。
解体してみたら断熱材が入っていたり、躯体がボロボロだったりすることがよくあります。
その為、設計の段階でそのリスクがある旨をお客様に説明しておきましょう。

②躯体現しができない場合の仕上げをあらかじめ検討しておく。
躯体現しができなかった場合、お客様に説明する前に代替の仕上げ案を考えておきましょう。
「躯体に塗装」、「ふかし壁を作って塗装かクロス仕上げ」、「躯体にモルタル仕上げ」が一般的だと思います。また追加で金額が発生するので、あらかじめ金額を把握しておきましょう。

躯体現しをする際はお客様に分かりやすいように説明し、理解を得たうえで進めていきましょう。

躯体現しの実例紹介

ではここからは躯体現しの実例を紹介していきます!

上の画像は天井と壁を躯体現しにした実例です。
荒々しい躯体がインダストリアルテイストのインテリアによく合います。


こちらの画像は天井のみを躯体現しにした実例です。
先ほどの実例よりも躯体にヴィンテージ感が無く、どちらかというとスタイリッシュな印象です。モダンなデザインや北欧テイストなどにも合わせやすく、インダストリアルテイストが苦手な方にもおすすめです。
しかし躯体の状況がどうなっているかは解体するまで分らないという点がネックです。


こちらの画像は梁のみを躯体現しにした実例です。当時の施工の跡が結構残っていますが、上手く他のインテリアと調和している実例です。インダストリアルテイストになりがちな躯体現しでも、現す範囲を一部分にすることでそこまで主張することなくリノベーションらしさを取り入れることができます。


ダクトの露出に抵抗がある方は、梁型を作ってその中にダクトを通すという方法もあります。
上の画像は梁のみ塗装をしていますが、天井を躯体にして梁型を作ると画像のような印象になります。


梁を躯体現しとし、その下に壁を設ける場合、梁の面と壁の面を揃えるより、壁の面を梁の面より内側にした方が納まりが綺麗です。

まとめ

今回は「躯体現し」について紹介しましたがいかがでしたか?
空間も広く使える上にコスト削減にもなり、新築にはないリノベーションならではの雰囲気を作り出すことができる躯体現しですが、取り入れる場合には注意すべき点も何点かあります。
他の内装材にも共通して言えることですが、提案する際はきちんとデメリットや施工上の注意事項を把握し、お客様に理解していただいた上で取り入れましょう!

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