~この記事でわかること~
- 住まいの断熱=健康+快適+長持ちする家に
- コロナ渦で、社会的に住まい断熱への関心・需要がUPしている
- マンションリノベ断熱の基本は「充填断熱工法」
- 価格の安い断熱材は、施工方法に要注意!
- 断熱は、DIY・住み始めてからの追加工事でも遅くない
「断熱(だんねつ)」
それは、おうち作りを考える誰もの頭に一度は必ずよぎるトピックです。
断熱対策はおうち作りの必須要素でありながら、断熱の素材や工法がかなり数多く存在しているため、デザイナー自身も最新の断熱対策を常に把握しお客様に提案するのが困難なトピックでもあります。
そこで、今回はマンションリノベ時に取り入れることのできる断熱対策の基本についてご紹介していきたいと思います。
目次
住宅における断熱の役割
さて、ではまず初めに断熱が住まいにおいてなぜ重要なのかを改めて確認しておきましょう!
住まいにおける断熱が重要と言われる理由は大きく以下の5つと言えます。
① 一年中快適に過ごせる
②冷暖房費が安くなる
③いつもきれいな空気に
④家族の健康が守れる
⑤家が長持ちする
基本的に、断熱化されていない住宅は、夏は外の熱気が家の中に侵入するため、冷房の効きが悪くなってしまいます。冬は壁や窓、天井、屋根などの開口部から暖房であたためた空気が外に逃げていってしまうため、”夏は暑く、冬は寒い”住宅になってしまいます。
しかし、しっかりと断熱化された住宅は、外気が建物内に侵入するのを防ぐため、少しの冷暖房エネルギーで快適な室内温度に保つことができます。
引用:MAG ISOVER
この様な基本的な断熱の情報について、新築戸建てを検討している場合等はハウスメーカーでも一度は説明があり、お客様も自身の住まいの断熱対策について住み始める前からある程度理解していることは多いかと思います。
しかし、リノベーション、特にマンションリノベとなると、既存のマンションに自分たちでどれほど断熱対策を施せるのか明確でなく、自身の住まいに断熱対策が施されているのか把握しないまま生活し始めるというお客様も少なくありません。そのため、”住んでみたら冬の隙間風で部屋がすごく寒い”や”夏場のクーラーの効きが良くない”と言ったご意見をリノベーション後に頂くことも多くあります。
そこで、リノベーションが住まいのスタンダードな選択肢として浸透してきている今、断熱対策についてもデザイナーがしっかりと理解しいつでもお客様に最適なご提案をできることが大切です。
今回の記事を「リノベ断熱の基本」として、ぜひ頭に入れておくと良いと思います!
今、コロナ渦で断熱がさらに注目されている?
国内No.1(※1)の中古マンション探しとリノベーションのワンストップサービス「リノベる。」を提供し、テクノロジーを活用したリノベーション・プラットフォームを構築するリノべる株式会社(本社:東京都港区、代表取締役:山下 智弘、以下 リノべる)は、20代~50代の東京、神奈川、埼玉、千葉の持ち家にお住まいの557名に対して、住まいの断熱に対する意識や対策状況について調査を実施しました。
以下に、調査結果の一部を抜粋したので確認してみましょう。
・調査結果
Q1:断熱への関心
断熱に関心のある人は61.7%で昨年と同等(2021年同調査では61.6%)
上記の対象557名に対して調査をしたところ、半数以上が断熱に関心がある、という結果となりました。これは、2020年の12月に同様の質問をした結果とほぼ同率(61.6%)で、一般的な断熱への関心は昨年度と比べて変化が薄いことがわかりました。
Q2:関心の変化(昨年比)
「断熱に関心あり」と答えた方の66.9%が昨年よりも関心が高まった
関心ありと答えた方の66.9%(「高まった」と「やや高まった」の合計)が昨年よりも関心が高まってるという結果となりました。関心のある人の割合は変わっていないものの、関心のある人の”関心度合い”は高まっていることがわかりました。
2020年に続き、コロナ禍の影響で在宅の時間が増えた2021年。
今回の調査では、「断熱に関心のある方」の関心がより一層高まり、2020年以降に断熱を行った方も多くいることが判明しました。
これは在宅ワークや外出自粛で家にいる時間が増加し、住まいへの関心が昨年以上に高まったことが要因と考えられます。暮らしの中で、日常的な寒さや暑さを感じたことや、光熱費の高騰を受け、断熱実施に踏み切った方が増加するなど、コロナ禍が住まいに与えた影響を感じる結果となりました。
引用:リノベる株式会社
更に詳細な調査結果は、リノベる会社のHPから確認ができます。
断熱に対するお客様のホットな意見を垣間見ることができますので、ぜひ、合わせて読んでみてください!
断熱工法の比較 ー内断熱と外断熱ー
それでは、ここから先は実際の断熱方法について細かく紹介していきたいと思います。
まず、住宅の断熱工法は大きく分けて「充填断熱」と「外張り断熱」の2つがあります。
充填断熱工法は、柱などの構造材の間に断熱材を入れる工法です。
引用:MAG ISOVER
ボード状やシート状の断熱材を入れたり、粒状の断熱材を入れる工法で、木造住宅において広く採用されている工法です。壁の内側の空間を利用するため、厚みのある断熱材を入れることができます。
外張り断熱工法(外断熱工法)は、ボード状の断熱材を柱などの構造材の外側に張り付けていき、住宅全体を覆う工法です。
引用:MAG ISOVER
主に発泡プラスチック系断熱材が用いられ、隙間なく断熱材を貼り付けることができます。
マンションリノベでは、個人的に外壁側に断熱を施すことは不可能なため、この記事内ではリノベーション時に一般的に取り入れることのできる「充填断熱工法」についてもう少し詳細を確認していきましょう。
リノベ工事時に取り入れられる主な断熱材7選
基本的に断熱材の種類としては、「無機繊維系」「木質繊維系」「発砲プラスチック系」の3つに分類することができます。リノベ工事時に「充填断熱工法」として設置することができる断熱材の中で、選択されることの多い主な断熱材7つを以下の表にまとめてみましたので、参考にしてみてください。
※(「天然素材系」と呼ばれる自然由来の断熱材も数多く出てきていますが、価格が非常に高いこと・専門業者を見つけることが難しいこと等を鑑み、今回は省略しております。)
<無機繊維系>
断熱材 | 主な特徴 | 主な工法 | 熱伝導率 [W/(m・K)] |
①グラスウール | ■安価 ■広く普及している ■燃えにくい ■防音効果がある ■湿気対策が必要 | 充填 | 0.033~0.050 |
②ロックウール | ■燃えにくい ■撥水性が高い ■湿気対策が必要 | 充填 | 0.035~0.047 |
<木材繊維系>
断熱材 | 主な特徴 | 主な工法 | 熱伝導率 [W/(m・K)] |
③セルロース(セルローズ)ファイバー | ■価格が高い ■結露を防ぎやすい ■防音効果がある | 充填 | 0.038~0.040 |
<発泡プラスチック系>
断熱材 | 主な特徴 | 主な工法 | 熱伝導率 [W/(m・K)] |
④⑤ビーズ法ポリスチレンフォーム | ■主に「ビーズ法」と「押出法」の2種 ■結露を防ぎやすい ■施工しやすい ■熱に弱い | 外張り 充填 | 0.024~0.043 |
⑥硬質ウレタンフォーム | ■価格が高い ■断熱性に優れる ■万一燃えると有毒ガスが発生する | 外張り 充填 | 0.023~0.040 |
⑦フェノールフォーム | ■価格が非常に高い ■燃えにくい ■有毒ガスの不安もほぼない ■耐久力がある ■断熱性が高い | 外張り 充填 | 0.019~0.036 |
「熱伝導率」とは、物質の熱の伝わりやすさを表す割合・量を表す単位です。
熱伝導率の数値が低い断熱材ほど、熱が伝わりにくい、つまりは断熱効果が高いと言えます。
引用:リショップナビ
上記の表からも分かる様に、性能の高さ=価格の高さにダイレクトに反映されるため、費用を抑えて断熱をという場合には、「グラスウール」を充填するという選択が多くなるかもしれません。
ただ、グラスウールも
”グラスウールを補填したは良いものの、施工方法が雑で断熱材同士に隙間が多く出来ていたため、そこから湿気でグラスウールが半分以下に縮んでしまい再施工が必要となった”
という失敗談を聞くこともあるほど、施工方法をきちんと理解している業者でないと、効果が発揮されずに断熱材本体がすぐに痛んでしまう可能性も高くなります。そのため、断熱材自体の素材選定はもちろんのこと、適切な施工方法についても工事前に工務店・施工業者と入念に確認しながら進める様にしましょう。
それでは、ここからは各断熱材の特徴を見ていきましょう!
「無機繊維系」断熱材のメリット・デメリット
まずは、「無機繊維系」と呼ばれる断熱材についてです。
繊維状の素材が絡み合って空気層を作り断熱効果を生み出す「繊維系断熱材」。その中でも、鉱物などを原料とした断熱材は「無機繊維系」と呼ばれています。
①グラスウール
引用:リショップナビ
鉱物(ガラス)を細い繊維状に加工した物。
壁・天井・床などに施工でき、価格も安価なため広く普及しています。
原料が鉱物なので燃えにくく、吸音性が高いことから防音に利用されることも。
繊維の密度が高まって厚みが増すほど、断熱性もアップします。
一方で、湿気に弱いというデメリットがあるため、防湿・結露対策が必要です。
②ロックウール
引用:リショップナビ
玄武岩・スラグなどの鉱物を主原料とし、繊維状に加工した物。
グラスウールと特徴が似ており、燃えにくく、熱に強い素材です。
撥水性が高いこともメリットとして挙げられますが、湿気には弱いため対策が必要です。
また、触れるとチクチクしてかゆみを感じることがあります。
「木質繊維系」断熱材のメリット・デメリット
次に、「木質繊維系」と呼ばれる断熱材についてです。
繊維系断熱材のもう一つの系統である、木質系の素材を利用した「木質繊維系」。自然素材特有のメリットを持つ優秀な断熱材です。
③セルロース(セルローズ)ファイバー
引用:リショップナビ
新聞紙や段ボール、おがくずなどの天然木質系原料を綿状にした物。
ホウ酸や硫酸アンモニウムを加え、難燃性や防虫効果を高めています。
吹き付けていく充填工法で施工するため、隙間を作らず、高い気密性を確保できます。素材自体が本来持つ吸放湿性が、内部結露の発生を抑制します。
環境に優しく、防音や吸音にも効果があります。
一方で、価格が割高であること、専門業者を探す必要があることがデメリットとされます。
「発泡プラスチック系」断熱材のメリット・デメリット
最後に、「発砲プラスチック系」と呼ばれる断熱材についてです。
優れた断熱性や施工のしやすさなどで人気の「発泡プラスチック系」。湿気に強い物も多く、近年注目を集めています。
④ビーズ法ポリスチレンフォーム(EPS)
ビーズ状にしたポリスチレン樹脂を発泡させた物。いわゆる発泡スチロールと同じ素材です。
柔らかく軽量で加工しやすく、水を吸わないという特徴から、結露の防止にも役立ちます。
発泡プラスチック系断熱材の中では安価であるものの、無機繊維系の断熱材に比べると価格は割高です。
また、熱に弱いというデメリットもあります。
⑤押出法ポリスチレンフォーム(XPS)
ビーズ法ポリスチレンフォームとほぼ同じ素材を、発泡させながら押し出して、固い板状に成形した物。
プラスチックの粒がビーズ法よりも小さく、薄くても高い断熱性を発揮します。
ビーズ法と同様、水に強く軽量で、加工や施工がしやすい点が魅力です。
一方で、熱に弱いというデメリットも共通しています。
⑥硬質ウレタンフォーム
引用:リショップナビ
ポリウレタン樹脂に発泡剤を加えた物。
ボード状の素材の他、施工箇所に直接吹き付ける工法もあります。
気泡に含まれる小さなガスが熱の伝導を抑えるため、優れた断熱性を発揮します。
デメリットは高価なことと、万が一燃えた場合に有毒ガスが発生する可能性があることです。
ただし、建物の一部が燃えてしまった場合に、有毒成分を発する危険性があるのは断熱材に限った話ではないため「断熱材選びの際に気にしすぎる必要はない」という意見も見られます。
⑦フェノールフォーム
引用:Phenovaboard
フェノール樹脂に、発泡剤や硬化剤を加えた物。
熱を帯びると硬化する特徴があるため、非常に燃えにくく、有毒ガスが発生する心配はほとんどありません。
熱伝導率が0.019~0.036W/(m・K)と圧倒的に低く、また耐久性にも優れているので、高い断熱効果を長期にわたって維持します。
一番のデメリットとしては、他の断熱材に比べて価格がかなり高いという点が挙げられます。
DIY・追加工事でできるお手軽断熱とは?
これまでは、リノベ工事時に施工をする「充填断熱工法」と呼ばれる一番大掛かりな断熱対策についてご紹介してきましたが、
マンションリノベで実践できる断熱対策は、それだけではありません!
皆さんも既にご存知かと思いますが、以前別の記事でご紹介したインナーサッシ(内窓)もリノベ断熱の強い味方です。
これは、一般住宅において熱の出入りが、屋根や外壁よりも窓などの開口部から最も行われているためです。築古の建物ではサッシの機能性が劣るため、どうしても窓からの外気の侵入を防ぐことができません。そこで、気密性を上げるためにインナーサッシが必要となってきます。
インナーサッシの詳細については、こちらの記事を合わせて読んでみてください!
【基礎知識】これで納得!インナーサッシ(内窓)がリノベーションで選ばれる理由
また、同じ開口部ということでは玄関扉も例外ではありません。こちらは、窓周りに比べると、マンションの大規模修繕で既に扉の交換が完了している場合もありますが、築古のマンションでは玄関も外気侵入の経路になっています。
玄関扉については、すぐにDIYで簡易的な断熱を行うことができるので、こちらのサイトで詳細を確認してみると良いでしょう!
さて、今回は「リノベ断熱の基本」についてご紹介しましたが、参考になりましたでしょうか?
この記事でご紹介した内容は、基本的な断熱知識としてデザイナーが知っておくべき最低限の情報ですので、「何これ!?知らなかった!」という部分があった方は、ぜひ何度か読み直して自分の知識として身に付けると良いと思います。
そして、断熱の技術も年々進化し、毎年の様に新たな素材・工法が出てきていますので、ぜひ引き続き最新の断熱情報をチェックしていきましょう!こちらでも、また改めて「最新の断熱ニュース」を随時ご紹介していていければと思います。
それでは、またお会いしましょう!