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2021.09.09

住宅リノベーション設計職ってどんな仕事?現役リノベ設計職が詳しく伝えます!(後編)

住宅リノベーション設計職ってどんな仕事?現役リノベ設計職が詳しく伝えます!(後編)

前回の記事では、ワンストップ型のリノベーションサービスにおける設計者の仕事内容の前半部分をお伝えさせていただきました。

【住宅リノベーション設計職ってどんな仕事?現役リノベ設計職が詳しく伝えます!(前編)】

今回の記事では、その後編として本格的な設計・監理業務についてお伝えします。

設計業務全体の流れとしては、現地調査から設計プランの作成とお客様との打ち合わせ、解体確認・中間確認・竣工確認、引渡し、アフターメンテナンス対応という流れで工事監理も含めて行っていきます。

基本的にはリノベーション設計職の経験がなくても、住宅の設計業務の経験があれば比較的スムーズに業務に順応できることが多いです。

理由としては戸建の場合、主要構造部まで設計範囲が及ぶことと、各種法令に関する知識が必要になりますが、
マンションリノベーションの場合、主要構造部には着手しないのと、必要になる法令知識の戸建てと比較すると少なくて済むからです。

それでは早速、現地調査から見ていきましょう。

 

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現地調査

現地調査は設計者なら誰しも経験があるかと思いますが、リノベーション設計の場合は確認するポイントが少し違ってきます。

まず、マンションの場合は事前に管理会社に連絡し、管理規約や竣工図を確認したい旨を伝えてアポを取っておく必要があります。

竣工図は持ち出しできないため、必要な資料を膨大な量の設計図から探し出し、写真を撮っておきます。

竣工図の読み取りがリノベ設計者の最初のハードルでもあり、会社に戻った後に必要なページが確認できていないことが判明し、再度竣工図を確認しに行くということが多々あります。

またマンションリノベーションの場合は、専有部分の工事に入る際に、工事申請書という所定の書類を提出し、マンション理事会で承認される必要がありますので、工事申請書を管理人から受け取り、注意事項を伺っておきます。
新築における建築確認申請の簡易版というイメージです。

管理人より工事車両の駐車スペースや資材の搬入経路、共用部分の養生範囲の確認をして、いよいよお部屋の現地調査に入っていきます。

リノベーションでは主に以下の内容を調査します。
1、寸法の確認
2、仕上げ、構造の確認
3、設備関係の確認
4、排水・排気経路の確認

1、寸法の確認

物件の寸法の確認では、

竣工図を参考にしながら各部屋の幅、奥行き、高さ、窓枠の寸法と壁からの距離を測ります。
竣工図に詳細の寸法がない場合や既存のまま再利用する場合は細かく寸法を測ります。
特にマンションの場合は、外部に面した壁にはコンクリート面に断熱材が吹き付けられていることが多いので、内部壁を解体せず既存利用することが多いです。
採寸にはレーザーとスケールを使うことが多いです。

2、仕上げ

仕上げの確認では、内装のつくりや構造壁との接着がどのようになっているかを確認します。
内装壁は石膏ボードで基本的に施工されているので、壁を叩いて内部の構造を確認します。
主にコンクリート面にダンゴ状の接着剤を点々とつける方法と軸組を組んで施工する方法があり、音でどちらなのかを聞き分けます。

接着剤が貼りつけられている壁面を解体すると、コンクリート面に白い斑点のような模様が残ってしまうので、解体後にどうなるのかを想像しながら、調査を行うもリノベーション設計ならではの特徴です。

写真:コンクリート壁に残る接着剤の跡


3、設備関係の確認

設備関係の確認では、コンセント、ガス、電話線、ネット回線、警報機、リモコン等の位置の確認を行います。
マンションの場合は集合部分や管理室との連携があるのかどうかを確認することが重要になります。

電話線やネット回線などのモデュラージャックなどは接地面の壁を解体する場合、床下や天井裏を通し、延長することで比較的自由に配置ができますが、ガスのリモコンや共用部と連携している警報機の場合は線を延長することが難しいため、既存位置から大きくずらす事ができないのでその点を留意しましょう。
また、住設関係も再利用できるものがないかを確認します。
図面上はリフォームの履歴がなくても、実はリフォームされていたなんてこともあります。

4、排水・排気経路

排水・排気経路は、今後の設計プランに大きく影響するので重要なポイントです。

戸建の場合、構造部分まで工事できるので排水経路を変更できる場合が多いですが、マンションの場合多くは共用ダクトなどにまとめられています。

そのため、自由には移動できないことが多く、無理なプランは引渡し後の不具合や水漏れを起こすことがあるので、竣工図の確認の際にダクトの位置を把握しておきます。

以上の調査を出来るだけ正確に2〜3時間で行い、基本的には竣工図の情報を軸に現地の状況をまとめていきます。

わからない点は管理会社や施工業者など詳しい方に確認して、出来るだけ不測の事態が起きないよう確認を取りながらプランニングを行うことがリノベーションの設計では重要になります。

現地調査って実際どうやってるの?~持ち物と採寸編~
【第2弾】現地調査って実際どうやるの?~排水・換気・電気設備編~

 

設計プランの作成

現地調査を元に、お客様の実現したい住まいの要望を2〜3プランにまとめていきます。
まだ、解体前の場合はできるか分からないことは断言せず、上手くコミュニケーションを取ることがリノベーションの設計者として重要なポイントです。
打合せに関しては言った、言っていないなどのトラブルが起きやすいので議事録を作成し、毎回確認していただくようにすると良いです。

初めは大枠の間取りから決めていきます。水回りの位置をあまり変えないようにプランニングすることが原則で、それに合わせて家事動線などを意識して間取りを決めていきます。

仕上げのイメージやディテールについては、お客様がイメージしているものを画像で頂き、イメージの違いがないことを確認して進めることが重要です。

間取り、内装、住設関係、家具などとプランを詰めながら施工業者への概算見積もりを出してコストバランスの調整をして、工事金額を決定し、施工業者への発注を進めていきます。

 

解体確認

リノベーションの場合は解体工事後の確認がとても重要になります。
お客様と一緒に物件の細かい点を隅々まで確認していきます。

解体確認では現地調査でイメージしていた通りかどうかを確認し、進めているプランで問題がないか確認します。

木造の場合は基礎、柱、梁などの主要構造部が腐食していないかを確認し、マンションの場合は開口部付近に結露跡がないか等を確認しておきます。

お客様とも話し合い、特段問題がなければ工事に進んでいきますがリノベーションの場合、一般的に工期が新築よりも短く、また現場レベルでの変更や手間などの小さな確認事項が多く出てくるので、施工業者とのコミュニケーションしっかりと取り、工程表を細かく出してもらうようにしましょう。

 

中間確認

リノベーションの中間確認では実施仕上げ工事が始まる前段階にお客様のイメージと相違がないかを確認します。
部屋の広さを立体的に把握できるので、この時点でプランの最終確認をすることが多いです。

実施のタイミングを木工事が終了する少し前にすることで、間取りの変更があってもある程度融通が効くようにします。

造作棚や造作家具の位置などの確認をお客様にしていただき、下地の位置の指定などの詳細を確定していきます。

 

竣工確認

竣工確認はいよいよほとんど完成したお家の見学なので一番ワクワクする機会になります。
前日にピカピカに仕上げていきましょう!
お客様との竣工確認の前日に施工業者と確認し、不具合箇所を把握しておきます。
主に建具の可動、排水排気不良の確認、電気スイッチ、コンセントの確認、仕上げのキズなどインフラ部分と内装関係の確認を行います。
この時点できちんと確認しておくことで、引渡し後のアフターが発生しにくくなり、お客様の信頼を得ることができるので、念入りに確認します。
NPO法人住宅長期保証支援センターが発行している点検リスト「住まいのお手入れ」など協会が出しているフォーマットを活用することもオススメです。
特に水漏れが発生するとマンション全体に迷惑をかけてしまうので、念入りに確認しましょう。
お客様より指摘をいただいた箇所は是正として、施工会社にまとめて指示を出し、引渡しまでの是正期間でしっかりと手直しします。

引き渡し

是正確認の後、お客様は晴れてお客様と引渡しになります。
長かったリノベーションもこれで完成!

お客様も大満足になるよう最後はしっかりとお家の使い方や注意点をお伝えします。
無垢材などの自然素材を使っている場合はメンテナンス方法を事前に調べてお伝えしておくことで大事に愛着を持って使っていただけます。

また、プランを変更したことで換気経路が変わるため、結露には注意するようにお伝えしておきます。
リノベーションの場合、工事前と後で大きく変わるのでお客様も感動いただけることが多いので記念写真を撮ってプレゼントします。

アフター対応

住宅は基本的にメンテナンスが必須です。

設計者が実際に伺うことも多く、自分で設計した住宅がどのように使われているのかを見ることができるのでとても学びになる機会です。

リノベーションの場合、1年以内は施工業者が内装の施工責任を持つ「瑕疵担保責任」がありますので、きちんと対応しましょう。

ただ、リノベーションは手作りであることと作ることと、自然素材を使うことが多いため新築とは違いどうしても不具合が出やすいという点を事前に伝えておくことでアフター対応時のお客様の反応は変わります。

また、住設機器自体の保証は各設備メーカーが保証しているため、お引渡し時にきちんとお伝えしておきましょう。

 

以上、リノベ設計者の業務内容について2部構成でご説明させていただきました!
リノベならではの業務内容もありますが、営業工程から現地調査、引渡し後と幅広い工程を新築より比較的短期間で携わることで図面上だけではなく、現場での学びや実際使われている様子を確認して次の設計に活かすことができます。

今後もリノベーションについての情報をお届けしますのでぜひお楽しみにしてください!