⊕こちらの記事は『施工の神様』からの転載記事であり、許諾を得て掲載しております。
優秀な現場監督は、”何もしない”人ばかり
現場監督の見習い時代は、とにかく色んな現場に行っては、勉強しながら仕事の流れを覚えていくものだ。私も本当にいろいろな現場を経験させてもらい、今となっては本当にいい経験をさせてもらったなと感じている。
そんな中で、一つずっと感じていたことがある。それは、点数の取れる現場監督は、意外にも”何もしない”人ばかりだったことだ。
ここで言う”何もしない”とは、肉体労働を伴う業務のことであり、書類作成などの必要最低限の業務はやっていた。
だが、点数を取る監督のイメージというと、加点のために自らが安全対策や地域貢献といったことを積極的にするイメージが強いと思う。
わずかな作業も人に任せてしまえ
何もしないと言うと人聞きが悪いので、別の言い方をしてみる。彼らは業務を完全に分業化し、自分の仕事(自分以外ができる)以外は一切しないことで、ムダな労力を使っていなかった。
例えば、現場のほんのちょっとした清掃でさえも完全に協力会社に任せていた。極端なようだが、限られた時間内で役所を納得させる書類を作成するためには、いかに業務を任せきって時間を捻出するかが重要だ。
また、安全管理における看板やバリケードの設置なども、基本的に現場の監督が行うものだが、”何もしない”監督たちは、こうした業務は社内の新人や応援を積極的に呼んで作業させていた。
賛否両論あるかもしれないが、人材を有効活用できているという点では、理にかなった選択だと思う。
インデックス作成自体が時間のムダ
こうした”何もしない”現場監督に話を聞いてみたところ、彼らは「インデックス作成」の時間でさえもムダに感じてしまうという。竣工検査の前になるとインデックスは基本的に事務員や新米の若者に任せていて、インデックスの作成を自分ですることほど効率が悪いことはない、と。
少し教えれば誰でもできてしまう業務は基本的に任せていくべきで、そうして実際に自分たちが本当にやるべき業務に時間を割くべきと話していた。
じゃあ、私たち現場監督が本当にやらなければならない業務とはいったいなんなのだろうか?
私は、施工方法の立案や使用する材料の管理など、専門的な分野に当たる業務が現場監督の腕の見せどころだと思う。ほかにも、市役所に具体的な根拠をもって折衝する力も重要になってくる。
こうした専門性の高い仕事をこなすためには、いかに雑務を下に任せ、効率化できるかが大切になる。
安全書類は新人に任せてしまえ
もちろん、仕事の要領をきちんと理解していなければ、人に仕事を任せることは難しいのだが、まずは安全書類の作成なんかは新人に完全に任せてしまえばいい。もちろん、安全管理は私たちにとって非常に重要な管理項目ではあるけれど、正直なところ安全書類の作成は日常的に行うお決まりの作業のようなものだ。
作成自体もそこまで難易度は高くない。新人に任せることで、作業時間の効率化を図り、新人も安全管理の書類を通していろいろなことを学ぶことができる。作業計画書なども作成させれば、高所作業車の具体的な用途、使用目的、アウトリガーなどの専門用語、自主点検表の有無などなど、必要事項も自然に身につく。
建設業界には、部下に仕事を任せるという文化があまりない。人に任せると逆に時間が取られてしまうなんて考える人もいるかもしれない。だが、それでは業務に忙殺され、仕事の質が低下していく一方だ。自分にしかできない仕事にコミットするためにも、まずは人に任せられる仕事を洗い出してみてほしい。
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