〜この記事でわかること〜
- 水回りを動かす計画は排水ルートに要注意!
- 排水ルート・排水勾配で床高がほぼ決まる
- 現調時に排水方法を必ず確認
マンションリノベーションでは、経年劣化した排水管まで一新して計画することが多いですよね。また既存の間取りから大きく変化した水回りの計画で”リノベーション感”に期待するお施主様もいらっしゃいます。
しかし、水回りの大幅な移動によって床段差ができていたり、適切な排水勾配を知らずに施工していると汚物が詰まることがあるため、無知のまま計画してはいけません。
快適なお部屋の提案ができるように、基礎知識をみていきましょう!
目次
排水の種類って知っている?
マンションの排水は、排水物の種類によって3つに大別されています。
排水種類 | 排水口のある場所 |
---|---|
汚水 | トイレ |
雑排水 | 台所、風呂、洗面、洗濯 |
雨水 | 屋上やバルコニー |
この3つのうち、生活排水である汚水と雑排水はマンションによっては、必ずしも別々で排水されているわけではなく、同じ排水管に合流させていることがあります(合流式)。ちなみに、汚水と雑排水を別系統の排水管で排水する場合は”分流式”というそうです。字のままの意味で覚えやすいですね。
さらに、詰まりやすいキッチンの雑排水だけ別系統の竪管を設置しているマンションもあり、宅内にPS(パイプスペース)が2~3箇所ある場合があります。竣工図がなくても販売図面のPSの数から、排水方式を推測できることもあります。
現調したときに分かる、排水方法の種類
排水方法を確認するとき、 【床排水・壁排水・スラブ下排水】の3つのうち何になるかを推測していきます。
これらの用語を区別する違いは、”どのレベル(高さ)で共用竪管に接続されているか”です。現地調査でみられる例とともに、それぞれみてみましょう。
1)床スラブ上配管方式
引用:NextMankan
住戸の床スラブ上に、横引き配管する方法。さらに以下aとbのように、室内の床面の下か上のどちらが排水竪管の横引き管と衛生機器が接続されているかで排水方法の呼び方に違いがあります。
a. 床排水
室内の床下で、竪管に配管している。設備機器からの排水管が床に接続されてみえる状態。
<例>洗面器がSトラップで床下に接続されている
b. 壁排水
室内の床上で、横引き管が竪管に接続されている状態。
<例>便器の排水管が壁に向かって露出している
※壁排水の場合は、現調時に既存床からの排水芯の高さを測っておきましょう。
引用:キンライサー
2)床スラブ下配管方式
引用:キンライサー
専有部分階の床スラブを貫通し、下階の天井裏に配管されて竪管につながっている方法。
c. スラブ下排水
一般的に、スラブ下配管と呼ぶことが多いです。一見、床排水(スラブ上)と間違いやすいので注意。最上階の場合は、竣工図や下地の状況も確認するといいかと思います。
<例>浴室の点検口などから確認すると、上階の排水管が見える
QUIZ!これは何排水でしょう?
では、さっそく復習です!以下のA~Cの写真は、何排水でしょうか?
A.
B.
C.
・・・・TIME IS UP!!
正解は、以下の通り。
- A: 壁排水
- B: スラブ下排水
- C: 壁排水
いかがでしたか?
Aは、下の写真のようにシステムキッチンの内部で横引配管されており、室内床上で竪管につながっているので、壁排水としてみています。
現調と竣工図を照らし合わせて、見立ての精度をあげていきしょう。(築古の物件だと、たまに竣工図が訂正されていないままのもので現場とズレがあったり、リフォームで竣工当初と間取りが変わり、現場から想定できないことがあります。)
排水横管の排水勾配って?
排水横管の勾配は、汚物を詰まりにくくするために最小値が規定され、管径によって異なります。排水勾配がきついと、流水の速度が速くなり汚物が取り残されることがあり、勾配がゆるいと、流速が遅くなり汚物が付着しやすくなります。
住宅の専有部分で使用される排水横管は50~100mmを使用することが多いので、以下2パターンを覚えておきましょう。
排水横管の管径 | 最小勾配 | 多用される箇所 |
---|---|---|
65mm以下 | 1/50 | 雑排水配管 |
75mm、100mm | 1/100 | 汚水配管、配管合流部 |
どうやって床高さを想定しているの?
計画時点での新規床の高さは、以下の順番にそって概算値を出しています。
①配管距離を計測。排水方法の違いにより計測起点が変わるので注意
└ 壁排水・床排水(スラブ上)は、竪管の横引き管の位置から
└ スラブ下排水は、スラブ埋設されている排水口の位置から
②配管する管径の最小勾配を配管距離に掛ける
③下地および仕上げ材厚を加算(配管管径とクリアランス含む)
④排水経路にスラブ段差(ダウンスラブやバサモル下地など)がないか確認し、経路にある場合は、加算する
└ 現調時の下地の確認に加えて、竣工図の床伏図や矩形図で確認しておく
この1~4をまとめて参考までに【計算式】をつくってみました。
仕上面床高さ=L × α + t + y
- L:計測起点からの排水設備までの配管距離
- α:排水横管の最小勾配
- t:下地や材厚(配管管径とクリアランス含む)
- y:スラブ段差など
※記号は便宜上、適当に割り振っています。
※あくまでも解体前の概算値の算出なので、その点はご注意ください。
※スラブ上排水の場合は、横引排水管の竪管との接続高さも考慮してください。(壁排水かスラブ上床排水か、物件条件によるため割愛)
概算できると、既存床より高くなって梁下の高さが低くなって計画に支障がでる等が想定できるようになります。解体時に慌てることも減り、現場も進めやすくなるので、簡易計算はできるようにしておきましょう。
概算の練習をしてみよう!
それでは、最後に床高さ概算トレーニング問題です!なお、仕上げ面の床高さの概算値の内訳がわかると、既存からいくつ高くなるかは、既存と新規条件を比較した差分で算出できます。
Q:スラブ下排水の専有部にあるキッチンの既設排水口位置から、1m離す場合、新規床高さは既存床から最低何cm上がるでしょうか?
[計画状況]
・排水竪管からキッチン既設排水口までの距離は2m
・新規配管する排水横管は50mm
・床材は既存と同等程度
・スラブ段差なし
A:2cm
移動距離1m=100mmなので、1000×1/50=20(mm)
10mm=1cmなので、2cm
※スラブ下排水なので、計測起点は既設排水口からの距離をみる
※既設排水横管も50mmと想定
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