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2022.12.08

自然派素材の漆喰・珪藻土の施工方法、注意点まとめ

自然派素材の漆喰・珪藻土の施工方法、注意点まとめ
  • 漆喰 / 珪藻土共に施工は「下地処理」→「下塗り」→「仕上げ塗り」が基本
  • 下地壁の状況(石膏ボード?壁紙の上から?)をきちんと把握
  • 下地処理が超重要!ずさんな処理は、クラックや剥がれの原因に
  • DIY初心者には練り済みタイプ、本格派は粉末タイプ
  • 「F☆☆☆☆製」と「自然素材100%」どちらの製品かしっかり確かめよう
  • 塗り壁の厚みは一般的に1.5~2.0mm程度で仕上げる
  • メンテナンス方法を知れば、汚れも怖くない!

 

「漆喰」「珪藻土」

 

壁仕上げの選択肢として良く耳にするこの2種類の塗り壁材ですが、皆さん、何が違うかしっかりと説明できますか?

自然派の素材で機能性も質感も良いけど、少し価格が高い仕上げ材だよな・・・・・?と、大まかにのみ把握している若手デザイナーも多いのではないでしょうか。前回は、この人気不動の自然素材「漆喰」と「珪藻土」の基本情報についてご紹介しました。2つの素材の違いについてはこちらの記事で確認してみてください。

 

▼前回記事はこちらから
漆喰・珪藻土の基礎知識、人気不動の自然素材を徹底解剖!

 

そして、今回は実践編!
実際の施工方法、そして塗り壁採用の注意点をご紹介していきます。

これを読めば、塗り壁(漆喰・珪藻土)施工の基本を把握できますので、しっかりと読み込んでおきましょう!!

 

まずは下地のチェックをしよう!

さて漆喰・珪藻土の施工にあたり、まず重要になってくるのが「下地処理」です。

皆さん、塗り壁にはどの下地材が適しているかご存知ですか?

 

古くから城郭の仕上げとしても用いられていた漆喰は、従来は、木下地組の上に土壁や砂漆喰(中塗り用漆喰)と言われる下塗り材を塗り、その上から仕上げ漆喰で塗り上げるのが基本でした。そのため、下の写真でも見える様に漆喰の層に一定の厚みがあり、強度と機能性の保たれた漆喰壁ができていました。
(一方で、漆喰の浮きや剥離が起こりやすいという問題点もありました。)

 

引用:田中石灰工業オンラインストア

 

現在では、内装下地材としては「石膏ボード」が一般的なため、漆喰仕上げの下地としても石膏ボードを用いることが多いかと思います。

これは珪藻土でも同じで、どのメーカーの漆喰・珪藻土も石膏ボードの上に施工できる製品がスタンダードとなっています。基本的に、仕上げ塗りの層は1.5〜2.0mm程度で仕上げることが推奨されており、また専用シーラーでの下地処理が必須です。この様に、昨今施工されている多くの漆喰・珪藻土はとても薄いため、下地の処理をきちんと行っていないと、クラックや剥がれ・アク・色むらが発生する原因となってしまうので注意が必要です。(下地処理が適切に行われていれば、現代の漆喰では浮きは起こりづらいと言われています)

 

では、漆喰・珪藻土が施工できる下地は、石膏ボード以外に何があるでしょう?
現在、多くのメーカーで施工がOKとなっているのは下記の5種類が代表的です。

 

  • 石膏ボード
  • ビニールクロス / 紙クロス / 布クロス
  • モルタル / コンクリート
  • 古壁 ( 砂壁 / 繊維壁 / 京土壁 )
  • ベニヤ / コンパネ

 

この様に、リノベーションで想定されるほとんどの下地の上に、漆喰・珪藻土を施工することが出来ます。しかし、下地の種類によって処理の施し方が異なってきますので、詳細の処理方法については次の章以降でしっかりと確認していきましょう!

 

基本の施工方法

それでは、ここからは漆喰・珪藻土の実際の施工方法を見ていきましょう!

下地処理編

先ほどの章からもお分かりの通り、塗り壁施工にあたっては「下地処理」が本当に肝です!
そこで、現在最も一般的な「石膏ボード」の下地処理を、漆喰メーカーの老舗 田川産業商事が運営するオンラインショップ「NURI²」内で紹介している方法を引用させていただき、ご紹介していきます!

 

◎石膏ボードの下地づくり

新築・リフォームで新たに構築する下地はほぼ石膏ボードで、塗り壁にする場合は特殊な貼り方をします。割れにくい漆喰壁にするためには、適切な目地処理と下地づくりが最も重要なので、工務店や大工さんに相談し、下地処理までをプロに行ってもらうことで割れにくく、長持ちする壁になります。

 

石膏ボードの貼り方

  1. 千鳥張り
    石膏ボードは、継手(つなぎ目)を揃えずに互い違いに貼る「千鳥張り」にします。
    継手のラインを揃えないことでボードが伸縮した際の動きを少なくできます。
  2. 開口部まわり
    開口部の延長線上に石膏ボードの継手がくるとズレの原因になるため、石膏ボードを開口部の形状にあわせてカットし、継手が延長線上にこないようにします。
  3. 二重ばり
    石膏ボードは二重張りを推奨します。下に張っている石膏ボードに対して、縦横ともに継手の位置をずらし、接着材を全面に塗り付けてステープル等で固定します。

 

引用:NURI²

 

ここまでが、石膏ボード上に漆喰を施工するための基本の下地づくりとなっています。

「ボード二重貼り」「千鳥張り」の有無は、壁の歪み具合や使用する塗り壁材等によって現場と対応を相談する場合もあるかと思いますが、「開口部の処理方法」は漆喰・珪藻土共に石膏ボードの上に施工する場合は、必ず確認をしましょう。
※この下地づくりの手間によって、木工事の金額が上がる場合もありますので、工事前にしっかりと工務店と詳細を確認のこと

 

下地づくりが完了したら、ここから実際に「下地処理」を行うことになります。
この下地処理については、「NURI²」のホームページでステップ毎に写真付きで確認できますので、そちらを参考にしてみてください。(石膏ボードだけでなく、その他の下地材の場合の処理方法についても詳しく紹介されていますので、合わせてチェックしてみてください)

 

▼NURI² 下地処理の詳細ページはこちら
キレイに仕上げるしっくい壁12の秘訣!「4.壁の種類ごとの準備」

 

上記は漆喰を想定した下地処理ですが、珪藻土の場合も、基本の下地づくりの方法はこちらを応用できます。

また、株式会社OKUTAが運営するオンラインショップでは、オリジナルブランド「EM珪藻土」の施工方法を公開しています。こちらで珪藻土施工時の一般的な注意事項等も大まかに確認できるかと思いますので、一読してみてください。(最終的な施工方法は、実際に使用する珪藻土メーカーのマニュアルを必ず参照のこと)

 

▼EM珪藻土の施工要領ページはこちら
EM珪藻土・EM珪藻土フラット 施工マニュアル

 

漆喰編

こちらが、一般的な漆喰の施工の流れとなっています。

 

①下地処理
壁が浮いたりしていないか・撓んでいないか強度を確認。古い壁の場合は、汚れを拭き取る。下地の種類に合わせて、剥がれや欠け・穴・ジョイントを埋め、フラットにする。
(既存の壁紙の上から、または古い壁に施工をする場合はクラックや剥がれが起きやすいので、下地処理を念入りに行う必要あり。)

②シーラー処理
使用する漆喰の専用or推奨のシーラー材でシーラー処理を施す。メーカーによってはシーラー不要の商品もあるので、詳細はメーカーに確認のこと。施工後は完全にシーラーを乾かす。
(下地がベニヤの場合は、アクが出やすいのでシーラー処理を念入りに行う必要あり。下地としてベニヤはあまりオススメされていないので、可能な限り石膏ボードで覆う。)

③下塗り
下地のシーラーが完全に乾いたら(2〜3日)、漆喰の下塗りを行う。下塗り材は、仕上げ塗り材よりも多少ざらつきのある骨材を足して接着性をあげることが多い。下塗りから仕上げ塗りまでは、完全に乾く前に一気に仕上げる必要があるとされている。

④仕上げ塗り
下塗りが完全に乾く前(表面が少し乾き始めたら)に、仕上げ塗りを始める。模様あり仕上げの場合は、この段階でパターンを付けていく。上塗りを途中で間を開けてしまうと色むらができるので、面毎で一気に塗り上げる必要がある。広範囲の場合は、人数をかけて作業する。

 

 

製品や左官職人さんによって細かな施工方法は異なりますので、詳細は必ず工務店と確認してください。また、こちらの動画で漆喰の施工工程を紹介していますので、一度見てみるとイメージが湧きやすいかと思います!

 

珪藻土編

珪藻土についても、基本的には上記で紹介した漆喰の施工方法と同等な場合がほとんどです。しかし、製品や左官職人さんによって細かな施工方法は異なりますので、こちらも詳細は必ず工務店と確認してください。

 

また、珪藻土の施工風景を紹介している動画がありましたので、漆喰との質感や塗り方の違いなどを見比べてみてください。

 

DIYでの施工について

リノベーションで漆喰や珪藻土をご希望されるお客様の中には、DIYで施工したいという方も多くいらっしゃいます。

ただ、工事中に施主施工OK・竣工後にのみ施主施工OKな場合など、会社・事務所によって対応方法が変わってくるかと思います。また塗り壁施工は、ここまで読んできてお分かりの様に入念な下地処理が仕上がりの精度をかなり左右しますので、お客様がどの様な目的で漆喰・珪藻土を取り入れたいのか確認し、ケースバイケースで判断をする必要があるでしょう。

 

以下に、目的別でのお客様へのご提案方法の例を上げてみましたので、判断時の参考にしてみてください。

 

 

◎機能性や清掃性から漆喰・珪藻土を検討されている

機能性を最大限に発揮するためには、天然素材100%の素材で適切な下地処理の上に施工をされていることが大前提です。そのため、プロが施工した品質・施工技術精度の高い仕上がりが望ましいです。

 

  • ご予算的にお部屋全体への採用が難しい場合
    LDKのみor玄関周りのみ等で部分的に塗り壁仕上げ、その他は量産クロスでコストバランスを取る
  • 水回りの湿気対策等でご検討の場合
    一般的に塗り壁(専用の商品を除く)は水回りへの積極的な使用はオススメできませんので、機能性クロスの採用や換気設備のアップグレードをする

などをご提案するのも良いかもしれません。

 

 

◎模様や質感など、素材の見た目から漆喰・珪藻土を検討されている

プロの仕上がりがもちろん望ましいですが、もし、ご予算的に本格的な左官工事は採用できないのであれば、質感を重視してDIY用のお手軽な商品をご自身で塗っていただくのも良いかと思います。

ただ、ゼロからの下地処理は少しご負担になる様でしたら、塗り壁施工のし易いクロスで仕上げ、竣工後に少しずつお客様のペースで塗り進めていただく方法などもご提案してはいかがでしょうか?(代替え案として、漆喰クロスを採用される方も多くいらっしゃいます!)

 

 

◎もともとDIYで漆喰・珪藻土施工を検討されている

DIY施工の際に起きやすい失敗やトラブルをお客様にご理解いただいた上で、施工がしやすい様に、可能な限り工事段階で下地調整をしておく必要があるでしょう。

また、下地調整まで行った状態でお引き渡し→竣工後にDIYで施工をしてクラックなどが入った場合にリノベーション工事補償の対象になるのか等、細かな部分まで事前に現場・お客様と擦り合わせを行うことが重要です。

 

 

いかがでしょうか?

お客様によっては「自然素材で良さそうだから、漆喰・珪藻土を取り入れたいかも…」となんとなくフワッと採用を考えていらっしゃる場合もあると思いますので、漆喰・珪藻土の何に魅力を感じているのか?を一緒に紐解きながらベストなご提案をできる様にしていきましょう!

 

また、こちらの動画でそれぞれ漆喰・珪藻土のDIY施工方法を分かりやすく紹介していますので、一度DIYでの施工手順を確認してみると良いかと思います。

 

▼DIYで漆喰の紹介動画

 

▼DIYで珪藻土の紹介動画

 

塗り壁施工で注意するべき3項目

では、最後に漆喰・珪藻土を採用する際の注意点3つを確認しておきましょう。

 

①塗り壁は下地処理が肝

今回の記事の中で何度も書いてきた通り、漆喰・珪藻土の仕上がりを大きく左右するのが下地の処理です!

プロにしろ、DIYでの施工にしろ、下地の状態を把握して適切に対処をしていないと、早期のクラックや剥がれの原因となります。また、商品によって使用できる石膏ボードの種類に限りがある(耐水ボード等には施工推奨していない)もの等もあるので、必ず使用する商品に適した下地・シーラー材を選択する必要があります。(併せて、工務店に左官工事で依頼する際は、使用する商品が「F☆☆☆☆製」と「自然素材100%」どちらの製品かもしっかりと事前に確認しましょう)

 

 

②換気と室温管理に注意

漆喰・珪藻土の施工は、室温が10〜15℃を下回ってしまうと白華・色ムラ・粉浮きのおそれがあります。そのため、冬場の施工には注意が必要です。
また、天然素材の特性上、湿気のこもった環境での施工も乾燥が正常に進まず仕上がりに影響を及ぼすことがあるので、梅雨の時期の施工も定期的な換気や湿度の調整が必要です。

その他、細かな温度管理の方法や注意事項については、採用する商品の施工要領を事前に確認する様にしましょう。

 

 

③クラックやシミと上手に付き合おう

塗り壁は、他の仕上げと比べてクラックは比較的入りやすい仕上げと言えるでしょう。また、天然素材のため、湿気による下地の膨張や収縮によってクラックが発生する可能性があります。加えて、水分を吸収しやすい特性上、コーヒーなどの液体が飛んだ際に壁に染み込んでしまうこともあります。

これだけ聞くと少し扱いづらい素材の様に感じるかもしれませんが、日々のメンテナンス方法をしっかりと把握していれば、クラックやシミも怖くありません。小さな傷や汚れは比較的簡単に自分で落とすことができるので、長期的に見ると清掃性には優れている素材です。

 

 

以上の様に、天然の素材のメリット・デメリットがあることを、採用前にお客様にも説明しておくことが重要です。

 

 

さて、今回は「漆喰」と「珪藻土」の施工方法をご紹介してまいりました!

少し難易度の高く感じる素材ではありますが、コストバランスと注意点をしっかりと押さえれば、天然素材で機能性も高く・空間のクオリティを格上げしてくれるとても魅力的な仕上げ材です。

 

前回・今回の記事で「漆喰・珪藻土の基本 / 施工の基礎」についての知識を身に付けて、積極的にお客様にご提案してみてはいかがでしょうか?

では、また次の記事でお会いしましょう!

 

 

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