〜この記事でわかること〜
- 「ヘアークラック」とは、幅が約0.3mm程度の細いひび割れのこと
- お客様には必ず・事前に・素材のメリットだけでなくデメリットもお伝えする。
- クロスでもクラックは起きる?
最近ではマンションリノベーションで、壁を塗装仕上げにするお部屋も増えてきているのではないでしょうか?
しかし、クロスよりも一般的に内装で使われる水性塗装仕上げでは、お部屋によって、クラック(ひび割れ)が1~2年以内ででてきてしまうことがあります。
仕上げの選定をする際に、事前にお施主様に素材特性や対処法をお伝えしていないと、むやみに施工不良の不安を抱かせてしまうこともあります。
今回は、その事前アナウンスとお手入れ方法をおさえておきましょう。
目次
クラックはどうしてできるの?
内壁(間仕切り壁やふかし壁、増し張りなど)の仕上げ材に生じるクラックは、主にPB(石膏ボード)下地などの継ぎ目や開口部まわりに現れます。
そのほとんどが「ヘアークラック」と呼ばれる、幅が約0.3mm程度の細いひび割れです。
名前の通り髪の毛のように細いもので、構造に影響するものではないですが、水回り箇所ではカビが発生する可能性があるので、注意してください。
<ヘアークラックが生じやすい箇所と原因>
箇所 | 主な原因例 |
---|---|
PBとPBの継ぎ目 | 振動によるもの。特にドアなどの開口部まわりは振動を受けやすい |
PBと木質素材(構造用合板等)との継ぎ目 | 木質素材の収縮による。 |
PBと壁埋込固定棚等との継ぎ目 | 木質素材の収縮や振動による。 |
既存下地と新規下地との継ぎ目 | 下地の経年劣化や、下地材の違いによる。 |
入隅や出隅 | 振動や衝撃による。 |
上記外の箇所に発生したクラックは、経年劣化したコンクリート下地に発生したひび割れや地震などの外的要因によって発生した可能性があります。ヘアークラックより幅の広いひび割れは、他の原因もないか検討しましょう。
※戸建ての場合は、この他にも構造材や地盤に起因する可能性が多からずありますが、あまりにもクラックが多い場合は施工品質不良がないか施工店と改めて確認しましょう。
事前アナウンスはどうすればいいの?
塗装の種類はいくつかありますが、今回は内装材として一般的に使われる水性塗装(AEP)仕上げでの事前アナウンスの一例を挙げてみます。
<POINT>
素材のメリットだけでなくデメリットもお伝えし、素材を理解していただく
「水性塗装は、内壁と居室内の躯体コンクリートへの塗装をお好きな色味であわせることができます。ただ塗料の特性として、内壁への塗装は特に経年劣化でヘアークラックや開閉クラックが室環境によって生じることがあります。そのため、都度お手入れしていただいたり、そのまま愛着をもって付き合っていかれる方が選ばれることが多いです。」
※ヘアークラックの写真があれば、参考に提示するといいでしょう
※クラックに対して難色を示すようであれば、ひび割れに強いクロス(参考クロス:リリカラノート)をご案内してみましょう。
お手入れ方法は?
さて、クラックについてもご理解いただけたなら、次はお手入れ方法です。
ただし、お施主様ご自身で補修できるお手入れ方法と施工業者による対応がありますので、その点を説明します。
<かんたん補修方法>
- 壁用のジョイントコーク(コーキング材)をヘアークラックに埋める。
はみ出たコーキング材は、毛羽立ちのない布ですぐにふき取る。(水性塗料は、塗装下地が耐水でない場合は塗装剥がれを起こす可能性があるため、PB下地の場合は特に水分を多く含んだスポンジなどの使用はしないこと。) - コーキング材が壁と同じ色ではない場合は、コーキング材を乾燥させた後に塗装する。
・クラックまわりの壁色と色ムラができる可能性がある(塗装時期が違うため)
・ハケよりもローラーを使ってまわりに馴染ませると目立ちにくい。
<市販のコーキング材>
コーキング材で主流なのは、ヤヨイ化学販売(株)の「ジョイントコーク・A」「ジョイントコーク・M」でホームセンターで購入できます。
- ジョイントコーク・A:全40色。若干の艶が残るが、色が豊富。
- ジョイントコーク・M:全6色。艶消しタイプで、Aに比べて乾燥後にほこりがつきにくい。
ただし、下地自体が割れている場合は、下地のパテ補修が必要なので、アフターメンテナンス保証期間内に施工業者に対応してもらいましょう。
クロスにもでてくる?
クロスでも下地の状態によってクラックは発生します。特に1000番台などの薄地のクロスは下地の影響を受けやすいです。
また前述のヘアークラックの発生しやすい箇所に加えて、クロスの場合は、壁紙の規格幅の継ぎ目が合板下地等に引っ張られてひび割れたり、圧着乾燥後にクロスの継ぎ目に隙間ができることがあります。
竣工確認時にクロス浮きや剥がれがないか、しっかりとみておきましょう。
素材と暮らすのはお施主様です。見た目だけでなく、日々使うことでみえてくる個性を紹介しておくと、気持ちのいいお部屋になるのではないでしょうか。
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