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新会社・東京ガスリノベーションが発足
東京ガスが38年間にわたり、リフォーム・リノベーション事業を手掛けてきたことは意外に知られていない。今回、関連会社2社が合併し、さらにリノベーション事業を強化。7月1日から新会社「東京ガスリノベーション株式会社」が誕生。代表取締役社長には石井敏康氏が就任した。
「東京ガスはエネルギー供給会社から、『より良い住環境を提供する企業』へと展開するため、今後は設備・サービス・エネルギーを単体ではなく、バンドル化していく」と語る石井社長に話を聞いた。
東京ガスは単なるエネルギー供給会社にあらず
――そもそも、東京ガスがなぜリノベーションを?
石井敏康氏 たしかに、意外に思われるかもしれませんね。東京ガスは、最近では電力自由化による電気供給にも注力しておりますが、一般的にはガスを主体としたエネルギー供給会社と認知されております。
しかし、弊社の事業の目指すところは「お客さまに暖かく、快適な住空間を提供すること」です。その一環として、お客さまの住環境を向上するためのリフォーム・リノベーション事業を38年前の1982年から続けてきました。
――リノベーション事業を手掛けるようになった経緯は?
石井敏康氏 過去に設置された金属性のガス管(※)は、古くなり錆びてしまうとガス漏れする可能性がでてきます。そこで、東京ガスは、ガス管の内面に樹脂製のライニング膜を形成し、長くガス管を維持できる技術について開発し、提供してきました(※現在埋設するガス管は、腐食に強く耐震性に優れたポリエチレン管を使用)。
当社がリノベーション事業を手掛けるようになるきっかけは、この技術を集合住宅の給排水にも応用できないか、と考えたことです。
ガス管と同様に、排水管も放置しておくとサビや腐食が進行し、つまりや漏水の原因となります。ですが、排水管を新たに作り直すとなると膨大な費用や時間が掛かります。そこで、同技術を集合住宅の給排水にも応用したわけです。
さらに、この技術はマンションの維持保全技術にも十分応用可能であったため、リノベーション分野にも本腰を入れるきっかけとなりました。
DREAM工法 概要
「エネルギー」を使わない時代がやってくる
――東京ガスが「市場志向」を持っているのは意外でした。
石井敏康氏 SDGs(持続可能な開発目標)を考えれば、エネルギーを使わなければ使わないほど良い時代が必ず到来します。すると、エネルギー単体で販売を拡大していくことは現実的に難しくなり、エネルギー分野単独での売上も減少を余儀なくされるでしょう。つまり、東京ガスの定義を「単なるエネルギー供給会社」と狭めて考えてしまうと、新たなビジネスに参入しにくくなるわけです。
お客さまも、電気・ガスといったエネルギー供給単体ではなく、温かさや美味しさといった快適な住空間を求めています。快適でコストも低く、環境に与える負荷も少ない住空間さえ実現できれば、エネルギー供給会社はどこでもよいのです。逆に考えると、快適な住空間を提案することができれば、結果としてエネルギーについてもパッケージでご提案できます。
マンションの給水設備工事当社としては、既存のマンションや住宅のリノベーションに対して、古くはガス器具の修理から始まり、業務を拡大することで多くのツールも持ち合わせております。しかし、バラバラにツールを保有していても、単発のニーズにしか応えることができません。
そこで、グループの技術力などを集約し、お客さまのさまざまなニーズにこたえ、共同提案ができるよう、旧「東京ガスリビングエンジニアリング株式会社」と旧「東京ガスリモデリング株式会社」が合併し、この7月1日から「東京ガスリノベーション株式会社」が誕生することになりました。
――具体的にはどのようなリノベーションを?
石井敏康氏 東京ガスグループでは、デベロッパーと連携して街づくりにも関わっていますが、当社としてはマンション1棟のレジリエンスを高める取り組み、例えば、屋上の防水層の改修時に、太陽光発電や蓄電池なども設置し、災害による停電時にも電気が使えるマンションへの修繕、お客さまの暮らしぶりに寄り添った戸建て住宅のフルリノベーションまで目指していきます。
戸建のリノベーションも手掛ける
もともと、旧「東京ガスリビングエンジニアリング株式会社」は”B to B”の業務で、主に首都圏における既存集合住宅のお客さまへのガス機器の販売やメンテナンス、共用部の修繕工事のほか、給排気設備の設計・点検・工事や部材の開発・販売等でした。一方、旧「東京ガスリモデリング株式会社」は”B to C”の業務で、首都圏を中心とした、住宅リフォームのプランニング・設計・施工と不動産仲介です。
昨今、風水害・停電等の災害から早急に復旧できるレジリエンスへの対応、人口減少による空き家問題、今後増大する集合住宅共用部修繕工事への対応など、住環境に関わるさまざまな社会課題が顕在化しつつあります。
この度の合併により、これらの社会課題を解決するため、両社が培ってきたノウハウを柔軟に組み合あせ、既存建物へのリノベーションをワンストップで提供することを目指しています。
サービス単体ではなく、バンドル化する
――人材育成については。
石井敏康氏 ITツールを使い、施工を含めた業務の効率化を進めています。仕事の難易度に沿って割り振りすることのほか、現時点では拠点ごとに仕事を割り振りしていますが、拠点間でも仕事の質、レベル感に応じて、社員や協力会社の人材を融通しながら、効率的に人員を回していく戦略を考えています。
また、技能に詳しい協力会社と社内の若手を一緒に仕事をさせ、学ばせています。協力会社との信頼関係をベースにしつつ、社内で人材を育成することで人材を確保していくことを考えています。
また、逆な発想、むしろ破壊的創造になってしまうかもしれませんが、習得に時間がかかる、極端に言えば技術力がなくても、安全な施工が可能な仕組みを、メーカーと協議していきたいと考えています。これまでのずいぶんと改善されてきてはいますが、ガス機器の施工や接続は、まだまだ生活者目線では分かりにくい部分がありますから、東京ガスグループ全体で安全な簡易施工の技術を開拓していきます。
――これからの展開は。
石井敏康氏 お客さまの一連のニーズに対して、設備・サービス・エネルギーを単体で提供するのではなく、複数組み合わせて提供するバンドル化をポイントに挙げています。
例えば、先ほども申し上げたような、災害に強くかつレジリエンスの高い住宅や非常時でも電気の供給が最低限できる住宅、あるいは在宅勤務のためのビジネスコーナーを伴う住宅など、さまざまなニーズも生まれています。
東京ガスグループには「自前主義」な側面がありましたが、これからは住宅周りの企業、とくに革新的なアイディアを保有するスタートアップ企業ともパートナーシップを築き、高い満足感を得られる、設備・サービス・エネルギーを組みわせた住まい・生活の価値向上を提供していければと考えています。
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