今回は、若手リノベーションデザイナーとして案件を数件掛け持ちしはじめた「匿名Aさん」からの失敗談です。
「担当した案件の引渡しが終わり、ほっと一息ついた数日後…
お客様より 『今日引っ越したら、ベッドが入らないんですけど。』と連絡が入りました。」
「(え、なんで‥??)Aさんの頭の中は疑問でいっぱいです。
打合せ時は事前にお客様の持ち込むベッドをもとに壁位置を決め、着工後も中間確認で壁の寸法を測って確認していたからです。」
Aさんは、どうして失敗してしまったのでしょうか?
目次
どこで間違えたんだろう…
まず下の図をみて、お部屋の状況を想像してみてください。
うーん。。壁が斜め…ベッドと3枚建て引き戸の寸法が厳しいですね…
さらにAさんは、以下の段取りをしていました。
<Aさんの段取り>
- お客様から持込ベッド寸法を確認し、可能な限りとれるクリアランスとして、壁内寸に100mmゆとりをとれるようにした。
- 壁を斜めに配置しているため、寸法記載を必要最低限とし、守り寸法が目につくように記載
- 中間確認時に寝室の壁の守り寸法が確保できていることを確認し、お客様にもベッドが入る寸法が確保できている旨をお伝えしていた。
一見、問題なく進みそうですが、Aさんによると、壁と枠の取り合いの現場確認の欠如と現場監督との認識齟齬によって起こってしまったミスだったとのこと。
守り寸法記載の過信
「振り返ると、中間確認時に現場監督と守り寸法の確認をしていましたが、中間確認時には建具枠はついておらず、『建具枠の箇所の壁は中間確認後につける予定です』という報告から、枠の分の壁があとで設置されると思っていました。
でも現場は、すでに立ってる壁軸組みに、建具側の壁をつけるという認識だったんです。」
守り寸法については、何度か話をしていた為、Aさんはベッドに必要な寸法は当然確保されているものだろうと現場に過信し、その食い違いに疑問に思うことができなかったそうです。
その後も現場に足を運んでも他の確認事項に追われて、建具枠がついてからも確認することなくお引渡しまでしてしまいました。
さらにAさんは反省しながら、なぜ引越し時まで発覚が遅れたのか問題点を挙げてくれました。
<問題点>
- 守り寸法を含め図面寸法の当て方がわかりにくく、現場ミスを誘発した
- 中間確認の際に、建具枠の見込寸法まで細かく確認できていなかった
- 建具枠設置後の守り寸法確保の確認不足
是正工事はどうしたの?
さて、実際にはどのように是正対応したのでしょうか?
「壁の施工ミスについては、お客様と相談をして、お客様の御厚意により建具の吊り込み位置を反転させるということで対応させていただきました。」
この吊り込み位置の反転は、控え壁側に反転した引戸厚分の隙間ができるため、苦肉の対応でしたが、お客様の最小限の工事に抑えたい意向もふまえたものだったようです。
※メーカー品の場合は、保証失効するのでご注意ください
是正対応は無事終わりましたが、お客様の信頼を損ねる結果となりました…
「設計者として、満足いただける形でお引渡しできない結果となり、今でも忘れられない案件です。」
同じ轍は踏まない!
二度と同じことを起こしたくないと語るAさんに実施している予防策を聞きました。
<予防策>
1. お客様のベッドサイズに対して、クリアランスを設けたレイアウト
※お客様の持込サイズは大まかに申告されていることがあるため注意する。
※ベッドサイズの他に、掛け布団のはみ出しや、シーツ交換等の日常の動作寸法も踏まえて、壁から100mm離すと勝手がいい。
2. 現場へ墨だし前の守り寸法の伝達と墨の確認
※読み込み間違えしないように寸法をひく(引き出し線をだしておく)
※現場調整が必要なところは、守り寸法以外に、枠寸法や外寸も記載しておく
※調整可能な寸法は最低限の守り寸法を明記しておく
3. 特に寸法が厳しい箇所は、現場で寸法確認をお客様と共に測って確かめておく(仕上げに入る前:中間確認時等)
「設計者も現場監督も職人も人間なので、確認のやりとりひとつでも多少の認識齟齬は生まれますよね。それが極力なくなるように読みやすい図面を心がけること、現場とのコミュニケーションを密にとり、仕上がりを確認していくことが失敗の数を減らすことにつながるのではないでしょうか。」
今回の図面では、少なくとも以下のように寸法を記載しておいておけば、現場での齟齬や自身の確認間違いをする可能性が低くなったのかもしれません。
この一件以降、Aさんは、お客様のお引越しが無事に終わった時にお部屋をお引渡しできたと実感するようになったそうです。
自分の図面に過信せず、ソーシャルディスタンスはとっても、コミュニケーションは密でいきましょう!