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2023.07.27

【建築散歩】前川國男が手がけた弘前市建築5作品を見に行ってみた!

【建築散歩】前川國男が手がけた弘前市建築5作品を見に行ってみた!

皆さん、こんにちは!

突然ですが、前川國男という建築家をご存知でしょうか。
1990年代の日本モダニズム建築を代表する建築家です。
青森県弘前市にルーツがあることから、同市には8件も彼の手がけた建築があります。
今回はこれらのうち5件を見てきましたので紹介したいと思います。
現在の設計にも十分取り入れられるアイディアや手法がたくさんありましたので、建築好きな方や設計者の方は、是非読み進めてみてください。

弘前市にはどうやっていくの?

私は大阪から出発したので飛行機で青森空港へ。
今回は青森空港からレンタカーを借りて弘前市まで向かい、建築を見てまわりました。
その他の行き方としては、空港からバスで約1時間で弘前市駅まで出ることも可能です。
駅前ではレンタサイクルもあり、今回のように複数の建物を見る場合にはオススメです。

物件マップと見学ルート

今回は地図にプロットした番号順に見て回りました。
特に弘前城のまわりはいつでも見れてる前川建築が4つも集まっているため、短時間で一気にたくさん見たい方にはオススメのエリアです。

1件目:弘前市民会館

まず1つ目は、弘前市民会館です。


弘前城の南西側から入っていくと弘前市民会館の外観が見えてきます。
近づいていくと外観の風合いが通常のRC打放と違うのが分かってきます。


安藤忠雄さんのようなつるりとしたRC打放ではなく、またいわゆる杉板型枠でもない、あえて小さな木の板を集めた型枠でRC打放が施されています。
威圧感を与えやすい大きな面であっても、このように細かな木目のパターンの意匠により、ぬくもりのようなやわらかな印象を感じます。


ぐるりと回り込むとエントランス兼渡り廊下があります。
前川建築では良くある構成だと勝手に思い込んでいますが、入口を低くすることで、中に入った時の広がりをより感じられるように計画されているのではないかと思います。


正面から見て左側が管理棟ですが、こちらに入っていくと、まずステンドグラスが美しい吹き抜けのホールがあります。
天井の照明配置は星空をイメージしているそうです。


ホールの上には喫茶店があり、オムライスやビーフシチューが食べられます。
吹き抜けの中に何気なく納まっていますが、2F廊下から少し床レベルが下がっており、吹き抜けと喫茶店に心地よい距離感が保たれています。


渡り廊下の上部はテラス席としても使われており、テラスの先はホール棟につながっています。


ホール棟2Fのホワイエが覗けたので写真を取りました。
この日は中に入れませんでしたが、パイプシャンデリアも美しく、またの機会に劇場部分やホワイエも中に入って見てみたいです。

2件目:弘前市立博物館

2つ目は、弘前市立博物館です。


打ち込みタイルの外観となっています。
前川さんは「コンクリート素材を活かした時期」と、「打ち込みタイルで素材を保護しつつ環境への調和を図った時期」があるようで、ここでは先ほどの市民会館とあわせて異なる時期の前川建築を同時に見ることができます。


弘前公園内の樹木を一本も切らずに済むようレイアウトされており、ロビーからはエントランスからは想像できないような大開口が開いており、
その保護された美しい庭を望める空間となっています。


こちらはRCのハツリ仕上。前川建築ではよく使われている仕上です。
コンクリートの固い印象を柔らげてくれる効果がありそうです。

この博物館では弘前市の歴史的資料などが展示されていました。

3件目:弘前市役所緑の相談所

3つ目は、弘前市役所緑の相談所です。


こちらの建物は軒先がかなり低く抑えられています。


しかし内部は大きな気積のダイナミックな空間を体感することができます。
また背面に背負う緑地は大開口から取り入れられ、空間を演出しています。
外からは威圧感を感じないのですが、内部ではインパクトのある空間が作られており、ボリュームの作りがとても参考になりました。


屋根を薄く見せるためのディティール。

4件目:弘前市役所

4つ目は、弘前市役所です。


人間の骨格にあたる柱梁は力強さを表現するためコンクリートとし、外壁は冬の雪など厳しい自然環境から保護するようにタイル貼とされており、
弘前市立博物館での打ち込みタイルなどにつながっていったようです。


エントランスの吹き抜けとつながった2F踊り場では、弘前公園を見ながら休憩できるような空間もあります。
建物全体として北側に向けて開口がたくさんあったり、屋上もあったりと、四季折々の弘前公園の景色が楽しめるよう配慮されているようです。

5件目:弘前市斎場

5つ目は、弘前市斎場です。


緑の相談所でもそうでしたが、招き入れる軒先は低く、威圧感の感じない外観となっています。


しかし、ひとたび軒下の車寄せ空間に入ると、コンクリートの梁で作られたグリッドの中の照明が優しく空間を照らし、ダイナミックでありつつ、故人を偲ぶことを想定したどこか厳かな雰囲気のある空間となっております。


内部は16:15くらいから閉館までの間で、式が入っていなければ見学可ということで、この日は見ることができませんでした。

その他

そのほか車で通りかかった時に見かけた、前川建築です。

木村産業研究所


弘前市立病院(令和4年3月で閉院のようです。)

その他にも今回は見れませんでしたが「青森県立弘前中央高校講堂」もあります。
(学校の中なので、一般の方は見るのは難しいかもしれません。)

 

いかがでしたか。

弘前市は前川建築が処女作から晩年の作品まで一つのエリアで見てまわれるとても貴重な街でした。
内外のボリューム操作や、素材へのこだわりなど、この記事で共有できたことも多いですが、実際にはまだまだここには書ききれないほど参考になる発見がたくさんありました。

まだ行ったことがないという方は、
これを機会に是非一度、
弘前の前川建築群を見に行かれることをオススメいたします!

もし青森に行く機会があればぜひ一度訪れていただきたいです。