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2021.02.24

【リノベを科学する】中古マンションの耐震性について、明治大学 特任教授 田村誠邦さんに聞いてみた

リノベる株式会社による連載企画「リノベを科学する」

中古住宅やリノベーションに対する不明や不安、素朴な疑問をデータを用いて「見える化する」=「科学する」連載企画です。
あくまでもリノベーション事業者へオーダーするユーザーへの記事ですが、リノベーションの仕事を行う皆様にとっても知っておきたい情報です。

是非、チェックしてみてください!

 

(以下、リノベる公式noteより)


連載企画「リノベを科学する」第4回のゲストは、明治大学 研究・知財戦略機構 特任教授であり、事業としてもマンションの再生をされている田村誠邦さん。今回は「中古マンションの耐震性」についてお話を伺いました。

中古マンションを買う際に多くの方が気になる「耐震基準」のことから、より安全なマンションを見分ける方法まで、ビギナー研究員・田形と、中堅研究員・千葉が伺ってきました。
(取材:リノベる。スタッフ/田形研究員、千葉研究員、文:村崎恭子)

写真左:千葉研究員、中央:田村誠邦先生、右:田形研究員

千葉:さぁ、「リノベを科学する」第4弾です!!

田形:今日は、明治大学 研究・知財戦略機構 特任教授、田村誠邦先生のオフィスへお邪魔しています!

千葉:この企画では、中古住宅やリノベーションに対する不安や素朴な疑問を、専門家の方にデータなどを見ながらわかりやすく解説していただきます。

田形:今回のテーマは「耐震性」です。専門性が高そうなので、少しですが予習をしてきました!

千葉:素晴らしい…!中古マンションを検討される方にとって、耐震性はかなり気になるポイントなので、今日はそのあたりがスッキリしたらいいですね。

田形:それでは田村先生、本日はどうぞよろしくお願いいたします!

田村:はい、こちらこそ。よろしくお願いします!

1)耐震基準って具体的にどういうこと?

田形:まず、先生は建物再生の専門家としてどんなお仕事をされてきたのでしょうか?

田村:私の事務所では、マンションの建て替えや再生、耐震補強や改修などをメインに仕事をしています。

田形:建て替えをするマンションって増えてきているんですか?

田村:件数だと二百数十、戸数で言うとまだ全国で2万戸弱です。全国のマンションのストックは現在666万戸ありますから、全体のわずか0.3%ほどですね。

田村先生 提供資料より

田形:そんなに少ないんですね…。今は建て替えよりも耐震補強をしていくことの方が一般的ということなのでしょうか?

田村:そうですね。建て替えは住民の合意形成や工事期間、金銭面などのハードルがとても高いので、思ったほど進んでいないんです。私も最近は再生・耐震補強のコンサルティングが中心ですね。

田形:なるほど。耐震補強のお話が出てきたところで、今回のテーマ「耐震」について伺っていきたいと思います!まずは一般的に知られている「旧耐震基準」「新耐震基準」について、中古マンションを検討する際に多くの方が気にするポイントですが、具体的にはどう違うんでしょう?

田村:耐震基準っていうのは大きな地震があるごとに基準が変わってきています。その中で大きな改正が過去に2回あって。有名な新耐震基準というのは、昭和56年6月以降に建築確認申請(法律で定められた建築前に国に提出する申請書類)をした建物ですね。それ以前は旧耐震基準のものなのですが、実は更に10年前の昭和47年にも大きな改正があって、それより前は「旧々耐震基準」と呼ばれています。

田形:そうだったんですね…!やはり耐震基準が改正されるごとに、地震による倒壊は減っているんですか?

田村:建物の倒壊という意味では、実は新耐震基準よりも、旧々耐震基準から旧耐震基準に変わった昭和47年の改正の方が意味が大きかったんですよ。阪神淡路大震災の調査で、建物の倒壊が多かった三宮駅周辺では、旧耐震基準のビルよりも旧々耐震基準の方がはるかに倒壊率が高かったというデータがあるんです。

田村先生 提供資料より

田形:え…これはすごい差ですね…

田村:ちなみに、新耐震基準の建物であっても倒壊率はゼロではないし、倒壊までいかずともかなり大きな損壊をしたところがありました。

千葉:語弊を恐れず言えば、「新耐震基準だから安心」というわけでもないということでしょうか…?

田村:そうですね、データからも読み取れる通り、事実として「新耐震基準だから壊れない」とは言えないですね。

田形:私も今までは「耐震基準が高い=壊れない」と思っていたふしがあるのですが、そうとは限らないわけなんですね。

田村:そもそも、新耐震基準や耐震補強は「壊れない」ではなく、「建物が壊れても中にいる人の命が損なわれない」というのが目安なんです。「絶対に壊れない」を求めたら柱や梁が大きくなって空間も狭くなるし、重量が増えるから支えるためにもっと大きくして…と不合理な話になってくるので、相対的に安全のラインを引いているんですよ。

千葉:確かに、建物以外にも「絶対に安全なもの」なんて存在しないですもんね。

田村:そう。建物が壊れること自体を否定すると、すごく難しいことになるんです。実際に、例えば構造体を支えない壁を「雑壁」というのですが、こういうものは地震などの時にはむしろ壊れた方がいいんですよ。壊れることによってエネルギーを吸収して倒壊を防ぐ効果があるからです。

千葉:部分的に敢えて壊れることで、構造体にかかる力を散らせる場合もあるということですね。

田村:昔の自動車ってぶつかってもあまりへこまなかったけど、最近のは、ぐしゃっと潰れちゃう。でも中の人は無事だ、というのと同じです。

田形:なるほど、すごく分かりやすいです!

2)耐震補強にはどんな方法があるの?

田形:一般的には「旧耐震基準」と一括りにしがちですが、実は旧々耐震基準と旧耐震基準の間にこそ、耐震性に大きな差があったんですね…!

田村:だけど、旧々耐震基準だから危ないってわけではなくて、旧々耐震基準でもちゃんと耐震性があるものもありますからね。

千葉:なおかつ、もともと耐震性が低かったとしても耐震補強工事をしてしっかり維持をすれば、挽回できるわけですね。

田村:そうそう。耐震補強工事はできますからね。

田形:構造の補強っていろんな方法があると思うんですが、一般的にはどういうものがあるんでしょう?

田村:大きくいうと、①耐力を上げる方法と②粘り強さ(靭性)を上げる方法があります。①はわかりやすくて、壁のないところに新しく耐震性のある壁を作ったり、今ある壁の厚さを増して耐震性を高めたり、柱や梁を増強したり。よくあるのはブレースですね。

田形:ブレースって、あの小学校の耐震補強とかでよく見る斜めのやつですね!

千葉:見た目で一番わかりやすいのはブレースですよね。

田村:そうですね。ブレースはいかにも補強しましたって感じです(笑)
そして、②の粘り強さを上げることも大切です。強い衝撃を受けた時に、粘り強さがあるとエネルギーが吸収されやすく壊れにくくなるので。方法としては、柱を炭素繊維(カーボンファイバー)で巻くという方法などがあります。炭素繊維ってすごく粘り強いんです。あとはこの資料にあるように、まぁ本当にいろいろな方法があるんですよ。

田村先生 提供資料より

田形:様々な素材を駆使して補強をするんですね!

田村:柱についている雑壁にスリットを入れる方法というのもあって。これは雑壁が壊れる時に構造を担う柱に悪影響を及ぼすのを防ぐために縁を切る方法ですが、こういうのも実は耐震補強。あとは、重量を減らすという方法もあります。例えば昔のエレベーターの塔屋って、大きい巻上げ装置があるからぴょこっと飛び出ているでしょう?最新のエレベーターに替えて飛び出す量を減らすことで建物の重量バランスがよくなり耐震性が高くなるんです。

千葉:引き算もするんですね!

田村:そう、軽くしたりバランスを良くするのも耐震補強なんです。

田形:なるほど~、おもしろい!

田村:ただ、そういうのを室内でやってしまうと居住性に問題があるので、アウトフレーム工法といって、バルコニーに別の柱を立ててフレームを組み補強するやり方など、室内をいじらずに居住者が住んだまま工事する「いながら施工」も多いですね。

田形:免震というのもよく耳にしますが、これらも後付けができるのでしょうか?

田村:できます。でも、すっごいお金がかかります(笑)なので文化財ぐらいしかやらないですね。

田形:文化財!(笑)ではマンションでは、今紹介いただいたやり方が一般的ということなんですね。

3)いちばん大事なのは住民の意識?

千葉:旧耐震基準であっても、もともと新耐震基準を満たす耐震性があるものもあったり、やはり補強が必要なものもあったりするので、いずれにせよまずは耐震診断をやっているかが重要になるわけですね。

田村:そうですね。でも、耐震診断も耐震補強も共用部分の話となるため個人ではできません。だから、組合がどれだけきちんとやってるかというところが大事なんですね。「管理の良いマンションを買いなさい」とよく言われるのはそういう意味もあります。

田形:なかなか耐震補強工事に踏み切れない理由って、どんなものがあるのでしょう?

田村:耐震改修をするための「耐震診断」を受けるのがすごく大事なんですが、実は耐震診断すら受けないマンションというのが結構多いんです。

千葉:その話は聞いたことがありますね…。

田村:ちょっと古いデータにはなるんですが、東京都の耐震診断の実施状況のアンケート結果です。

田村先生 提供資料より

田村:こういうアンケートに回答する組合って、“ちゃんと機能している組合”なんです。その中でも、耐震診断を受けたのはわずか17%なんです。

田形:思ったより少ないですね。

田村:耐震診断をやった結果を見ると、かなり深刻な状況を示す数値(旧耐震基準のIS値0.3未満)のところが20%もありました。この数値は、姉歯事件の時に国が建て替えを指示した数値と同等なんですよ。

田村先生 提供資料より

田村:下から2番目のグループ(IS値0.3~0.6の間)も、やっぱり耐震性が足りないからちゃんと改修しましょうっていうレベルですね。

田形:でも、問題ないものも37%あるんですね。

田村:未実施のマンションの回答を見ると、「検討していない」が6割くらい。その理由は「資産価値の低下」が一番多い。

田形:体に痛いところがあるけど健康診断受けるの嫌だ、みたいなことでしょうか…

田村:まさにそういうことですね。本当に資産価値を考えるなら、ちゃんと診断を受けて少しずつでも耐震改修していく方がいいはずなんですけどね。

千葉:でも、なぜ進まないんですか?

田村:結局、診断を受けても耐震改修をする以前に住民合意のハードルがあるんですよ。工事費が修繕積立金を超えてしまうと住戸ごとの個別負担が生じるので、払わない・払えない人もいるので。

千葉:それって十分な積立金がないマンションにとっては、かなり高いハードルですね。

田村:「どうせ合意できないから」と耐震診断を受けないんです。耐震性がないとわかっているのに耐震補強をしない物件の資産価値は下がりますからね。

田形:なるほど…。これはもう、住民の意識の問題でしょうか?

田村:意識ですね。とあるビンテージマンションでは、耐震改修か建て替えかっていう議論になった時に、「東日本大震災でも壊れなかったから大丈夫だ」と総会で強く言う住民がいたとか。感覚的ですよね(笑)

田形:東日本大震災での被害をきっかけに、耐震診断をしたマンションもあるそうなので、もしかしたら一理あるのかもしれませんが、大丈夫そうと思うからこそしっかり耐震診断を受けて見える化してみようという風になるといいですね…!

 つづきはリノベる公式noteでチェック!

いかがでしたでしょうか?つづきが気になる方が多いのでは?

このつづきは、リノベる公式note『リノベを科学する』を是非チェック!▼▼

note.renoveru.co.jp/n/n167e018adbc3